震災後復帰戦0-7記録大敗にも熱い声援。コンサドーレ札幌が抱く覚悟と決意
8日からは練習を再開し、フロンターレ戦へ向けて調整を重ねてきた。しかし、クラブ自体が地震発生前に戻っても、もろ手を挙げて喜ぶわけにはいかなかった。札幌市を中心とする北海道全域をホームタウンとするコンサドーレとして、被災者のために何かをしなければ、という思いに駆られる。 たとえば募金活動を展開するにしても、被災地である札幌市内を含めた北海道で行っていいものか、という思いが頭をもたげてくる。運営会社の株式会社コンサドーレの代表取締役社長を務める、クラブOBの野々村芳和氏(46)は「いまはそのタイミングではない、となりました」とこう続ける。 「そこへ対戦相手の川崎さんが、一緒に募金活動をすることを快く了承していただきました。サッカーファミリーといいますか、ともにスポーツをする仲間への感謝の思いをすごく感じています」 試合前にはベンチ入りしなかった両チームの選手が、スタジアム周辺で募金箱を手にしながら寄付を募った。フロンターレから期限付き移籍中で、契約により古巣との公式戦に出場できないU-21日本代表のMF三好康児(21)、そして稲本らも札幌から駆けつけていた。 今後は再び国際AマッチデーウィークでJ1が中断する来月上旬を利用して、選手やスタッフをボランティアとして被災地へ派遣するプランも進められている。すでにスタッフを被害が大きかった地域へ派遣し、今後において何が必要となるのかを調査させている。野々村社長が続ける。 「スタッフには現地をいろいろ回ってもらって、いつのタイミングになると、どのような人材が必要になるのかを把握してもらっています。選手たちには『行けるタイミングのときに、丸一日かけてでも何かお手伝いしに行こう』と言っています。もちろん、スタッフも全員で行こうと思っています。一緒にサッカーをするとか、ちょっとしたエンターテインメントがほしいタイミングだったらそれでいいんですけど、恐らくまだそういう状況ではないと思っているので」 もちろん、北海道を最も勇気づけるのはコンサドーレの勝利であり、目標として掲げている来シーズンのAFCチャンピオンズリーグ(ACL)出場権を手繰り寄せることにある。勝てばFC東京を抜いて3位に浮上し、2位のフロンターレに勝ち点で2ポイント差に肉迫できた直接対決は絶好のチャンスだったが、野々村社長は試合前に一抹の不安を漏らしていた。 「今日は一番大変だと思います。4日間休んだうえに、地震の影響で2日間練習できなかったので。そのあたりのコンディションは大変なところがあるんでしょうけど……」 図らずも懸念が現実のものとなってしまったが、だからといって腰が引けた戦いに終始したわけではない。前半15分までにコンサドーレが獲得した3度の決定機のうち一度でもゴールしていれば、まったく違った展開になっただろう。