なぜ122年つづく私設図書館を守り続けるのか?江北図書館は地域の誇りだった
令和4年度の『第4回野間出版文化賞特別賞』を受賞
江北図書館は、一般財団法人「野間文化財団」が手がける野間賞において『第4回 野間出版文化賞特別賞』を受賞。岩根さんも帝国ホテルで開催された授賞式に出席しています。 令和4年度の受賞者は他に林真理子さん、YAMAHA VOCALOID開発チームでした。令和5年度には芦田愛菜さん、黒柳徹子さん、藤井聡太さんなどが受賞されていることからもわかるように、野間賞は大変栄誉ある賞です。 「野間賞を頂けるなんて思っていなかったので驚いたのですが、野間賞を受賞したことで『建物の修繕に向けて本格的に動こう』という流れができました。ただ古い物を残すだけではなく、新しい取り組みができるようにとクラウドファンディングに挑戦することになります」 さらに、2023年11月には江北図書館が登録有形文化財に登録され、歴史的価値も認められました。
クラウドファンディングを利用してLib+を建設
クラウドファンディングを開始したところ、クラウドファンディング以外に直接的な支援をいただいたといいます。その総額は、約2,200万円。資金ができたことで、建物のモルタル壁やひび割れの修繕とトイレの新設に加え『Lib+』の建設が実現したとのこと。
汲み取り式のトイレをなんとかしたい
「一番は、トイレをなんとかしたかったという思いがありました。館内にトイレはあるのですが、汲み取り式のトイレだったため、多くの利用者は向かいにあるJR木ノ本駅のトイレを使用していました」 築86年の江北図書館にある汲み取り式のトイレは、綺麗に使用されているために汚いイメージは一切ありません。しかし、汲み取り式のトイレは手入れが必要なだけでなく、水洗式のトイレに慣れ親しんでいる人にとっては使用を敬遠するもの。 『Lib+』には多目的トイレを含む2基のトイレが設置されました。多目的トイレは、車椅子の方の利用やおむつ交換にも対応しています。トイレが設置されたことで、不便なトイレを利用する必要がなくなりました。
気軽に利用できるカフェとフリースペースを併設
『Lib+』には地元の人気パン屋『つるや』が経営するカフェがテナントとして入っており、その他のスペースはフリースペースです。カフェはすべてのメニューがテイクアウトのため、パンやコーヒーなどをフリースペースで食べられます。 また『Lib+』を含む江北図書館の全館にフリーWi-Fiが完備されているため、コワーキングスペースとしても利用可能です。 「こんな場所があるということを多くの人に知ってもらい、利用してもらいたいので、フリースペースは無料開放しています。ここで仕事をしたり、図書館で借りた本を読んだりして有意義な時間を過ごしていただければうれしいです」 『Lib+』がオープンしてから、とくに週末の来館者が増えたといいます。最近では中高生や江北図書館目当ての観光客も増え、平日にも賑わいを見せるようになりました。 「おかげさまでカフェとフリースペースは多くの人に利用してもらえるようになってきました。つるやさんに協力いただいたことで、来訪者の方々には喜んでもらっています。しかし、つるやさんには無理をお願いしている状態なので、運営は難しい部分があるかもしれません」 多くの人に利用してもらえる施設ができたことで、さらなる利用者増加の期待は高まります。一方で、新しい施設が増えたことで以前よりも経費がかかるため、費用面の課題にも取り組まなければならなくなりました。