ポーランド映画の現在地<2>製作支援の公的枠組み・個の尊重…「共助」の仕組みが文化につながる
最新・最注目のポーランド映画を集めて、バルト海沿岸の港湾都市・グディニアで9月下旬に開かれた、第49回グディニア・ポーランド映画祭は、多くの作品、多くの観客でにぎわっていた。ただ、1990年代後半から2000年代初頭にかけては、作品集めに苦労した時期もあったという。それは、映画祭側の問題というよりも、ポーランド映画界が経済的苦境に陥っていたためだという。
2005年の大きな変化、民間からの「1・5パーセント」
そんな状況を変えたのが、2005年、国の法律で新たに定められた映画製作への財政支援の公的枠組みだ。その統括機関として、ポーランド映画協会(英語名称はPolish Film Institute=PFI)が設立された。この法律はシネマトグラフィ―・アクトなどと呼ばれる。
PFIの運営・活動費は、ポーランド文化・国家遺産省の補助金などでまかなわれているが、製作支援の主たる原資は、映画の配給・放送・配信などで利益を得る事業体からの納付金だ。具体的には、映画配給会社や映画館オーナー、テレビ局(公共放送局を含む)、ケーブルテレビ、デジタルプラットフォームに毎年、利益の1・5%の納付が義務付けられている。こうした枠組みは、ポーランド文化・国家遺産省と、ポーランド映画人協会(英語名称はPolish Filmmakers Association)の協力を推進力にして、法制化にこぎつけたという。
グディニアで、PFIと映画人協会、それぞれに現状と課題について取材した。
フランスから大きな影響
2005年に規定されたポーランドの映画製作支援の枠組みは、フランスから大きな影響を受けているという。9月下旬の取材当時のPFI最高責任者(General Director)、カロリーナ・ロズヴド氏の説明によれば、「(各事業体が)1・5%を払い、それがまた映画界に還元されるというメカニズム。PFIはそのために設立されました。これらのお金は映画製作以外の、ポーランド映画の海外プロモーションや観客への映画教育プログラムなどにも使われます」。