「水メジャー」が担う浜松の下水道事業 水道コンセッションの「先例」になるか?
議会は下水道に続く上水道の民間委託に否定的
市は下水道に続いて上水道についてもコンセッション方式の導入を積極的に検討してきたが、議会はこれに否定的だ。 公共施設等へのコンセッション方式の導入は、安倍内閣の成長戦略として内閣府主導で進められてきた経緯がある。11月に官房長官の補佐官を辞任した福田隆之氏はPFIのスペシャリストで、一部報道では辞任の背景に水メジャーとの癒着があったのではないかと報じられている。浜松市は昨年3月から今年2月にかけて上水道事業にコンセッション方式を導入する可否を判断するための調査を実施し、今春、有効との結論を盛り込んだ報告書を発表。この調査業務は国が全額を助成し、1億円を超す費用が交付されているが、浜松市から公募型プロポーザル方式で受託したのが「新日本有限責任監査法人」(東京都千代田区、現・EY新日本有限責任監査法人)。同監査法人は辞任した福田氏が在籍し、内閣府のPFI推進室とも関わりがあることから、その経緯に関心が寄せられている。 この問題に関しては、11月市議会定例会で、共産党所属の市議が黒塗りの市提出資料を示して選定の経緯を質す場面があった。これに対し市担当者は「市職員6人からなる評価委員が事業者の提案を評価し、もっとも高い得点を獲得した事業者と随意契約を締結した」などと答弁、市職員の評価により事業者を選定したとしている。また、自民党所属の市議も「安全性が担保できるのか。南海トラフ地震を含め自然災害が発生した時に(委託企業が)どのように対応するのか十分な説明は行われていない。地元の業者からも反対する声が出ている」と話しており、上水道へのコンセッション方式導入に否定的な見解を示す。 下水道の西遠処理区でのケースでは、下水道管の維持・管理は民間に委託していないが、市が検討している上水道事業の民間委託では、水道管の維持・管理についても民間に委託する方針だった。このため、市内の水道関係の業者や建設業者などには警戒感が広がっている。ある業者は「天竜川から引く浜松の水道はとてもいい水。その水事業をなぜ民間企業に委託しようとするのか。これまで通りやってもらえればいいのではないか」と話す。地域が担ってきた水事業を外部企業に委託することによって、水の品質や地域の水事業が棄損するのではないか、という懸念があるのだ。 当初、今年度中に上水道へのコンセッション導入可否を決定すると強気の姿勢を見せていた鈴木康友市長だが、こうした状況を受けて期限を定めずに検討していくとトーンダウンしている。