「水メジャー」が担う浜松の下水道事業 水道コンセッションの「先例」になるか?
「人も物も金も集約して民間でやれば安くなる」
「公共の場合は単年度予算主義と議会の事前議決が必要ですが、民間ではそういったものはありません。今回20年契約ですので複数年契約もできます。よりバーゲニング・パワーが生じる。薬品や電気などを使って(施設を)運転していくのですが、その調達についてより安く調達することが可能です」。 こう話すのはヴェオリア・ジェネッツから浜松WS社に出向し、現在は西遠浄化センターで最高執行責任者を務める佐藤丈弘さんだ。ヴェオリア・ジェネッツからの出向組約10人を中心に事業に取り組んでいるという。「役所がやると公平性という観点から、あらゆるものを細切れにして発注します。この設備はA社、この設備はB社という具合に発注していくので、全体を最適化するのがなかなか難しかった。でも、民間が人も物も金も集約してやればより安くなりますし、スピード感も出ます。20年のスパンがありますので、民間であればコスト削減の見込みがあれば、改良投資もしていけます」と話す。 つまり、民間企業であればまとめて特定の業者に大量発注して、調達コストを大幅にカットすることが可能だという説明だ。 下水道の汚水は浄化した後に河川に放流するが、この際に発生する汚泥は焼却して灰にする。焼却灰には肥料などの原料となるリンが含まれているため、西遠浄化センターでは、これを業者に販売することで100%のリサイクルを達成している。 そしてこの部分でもコスト削減に向けた取り組みを進めているという。「ちょっとした菌を入れて培養することで、出てくる汚泥の量を20~30%減らせる可能性があります。その実験を始めているところです。発生する汚泥が20%減れば、汚泥処理設備の稼働時間が20%減る。それだけで電気代や薬品代のコストを20%削減できますし、焼却炉で燃やす燃料も20%減ります」と佐藤さんは説明する。
下水道料金は下がる?
「市が受け取る使用料と浜松WS社が受け取る利用料の両方が減って、下水道料金が下がることを期待しています」と浜松市上下水道部総務課官民連携グループ長の北嶋敏明さんは話し、官民連携によるコスト削減分は利用者に還元されると示唆する。 ただ、下水道料金そのものは、市議会の議決を経て条例で定められる。また、浜松WS社23.8%、市76.2%の配分についても、5年ごとに見直す契約になっている。現状のまま20年間推移していくことが決まっているわけではなく、適宜見直しが行われていくことになる。このため、料金が下がる可能性はある反面、上がることも否定はできない。 ヴェオリアは世界の水メジャーだが、浜松WS社は「地域とともに歩む地元企業」という位置付けであることを企業も市も共有しているという。地域の水事業を担う地元企業の経営が順調に進んでいる間は問題はないが、万一経営が厳しくなった時、値上げの可能性はないのか。その最終判断は議会に委ねられている格好だ。