「水メジャー」が担う浜松の下水道事業 水道コンセッションの「先例」になるか?
下水道収益の2割強が民間に
コンセッション方式の導入によって、浜松市の下水道事業はどのように変わっただろうか? 浜松市は昨秋、下水道料金を平均12.9%上げたが、市上下水道部によると、これは西遠浄化センターの民間への事業委託とは関係がなく、耐震化と起債対応のためだという。これ以降、浜松市の下水道料金に変更はなく、利用者から見ると運営が企業に変わったことによる特別な変化は感じられない。 唯一変わったのは配布される「使用水量等のお知らせ」に、下水道使用料に加えて利用料の記載が付け加えられたことだ。利用料とは浜松WS社が受け取る額を示したもので、使用料は市が受け取る額だ。その配分は浜松WS社23.8%、市76.2%。この比率がそのまま下水道収益の配分比率となり、浜松WS社はその収益で下水処理事業と施設の維持・管理、さらに会社経営を進め、市は下水道管の保守・管理等を行う。 市上下水道部によると、浜松WS社の収益は年間18~19億円で、市がこれまで行ってきた事業費よりも抑制されているという。市の従来の事業費と浜松WS社に配分される下水道料金の差は、民間事業委託によって実現されるコストカット分に当たると考えられる。ただ、市上下水道部が西遠処理区の昨年度までの単年度事業費について公表できないとしているため、民間委託によりどれくらいコストカットされるのかは外からはよくわからない。 一方で浜松市は、ヴェオリアグループの提案にもとづいて、20年間の西遠処理区の事業費は市が事業を行った場合より14.4%、額にして86.6億円縮減されると期待されると強調する。この縮減額の中には国の補助金の減額分も含まれている。どういうことかというと、例えば定期的に行う設備改修費には国が55%を補助している。仮に従来10億円で行っていた改修費を企業が8億円で発注すれば、国の補助額も5.5億円から4.4億円へ1.1億円減額されるので計3.1億円が縮減されたことになる。縮減の総額が86.6億円にのぼるとのことだが、あくまでも民間事業者がコスト削減を実現することが前提のため期待値にとどまる。 西遠処理区の下水道利用者数が大きく変化しない限り、浜松WS社の20年間の収益の総額は360~380億円になる計算だ。ただし、その中から20年間の運営権対価として市に25億円をキャッシュバックする契約になっているため、実質的な収益は335~355億円になる見込み。市上下水道部によると、この数字は市が同じ業務にかけてきた事業費よりずいぶんと低く抑えられているといい、同社としても年数億円規模のコストダウンを実現しないと現状の事業を継続することは難しそうだ。それでは、浜松WS社はどのようにしてコストダウンを実現しようとしているのだろうか。