9回打ち切りで野球の何がどう変わるか…恩恵を受ける球団は?
確かに延長10回を考えてゲーム展開によって「一人投手を後ろに残しておこう」というような配慮はいらなくなる。勝利の方程式が固まっているチームは、オートマチックに7、8、9回に3人をつぎ込む野球が可能になるだろう。 里崎氏は、「選手層が薄いけれど、7、8、9回の3人だけはしっかりしているぞ、というようなチームにとってはラッキー」と見ている。 さらに「パはピッチャーが打席に入らないので代打を出す場面はほぼ決まっている。継投のタイミングが難しいセの方が9回打ち切りの影響は大きいと思う。去年の引き分け数がセとパで違うのもその影響だと思う」と続けた。 そのセで恩恵を受けのはどこのチームだろうか。 「マルティネスがまだ来日できていないので今年はなんとも言えないが、去年の中日なんかは恩恵を受けるチームだと思う。7、8、9回が固まっているという意味では同じくまだデラロサが来ていないが、昨年の巨人もそう。阪神? スアレスは来日しているが、その前のセットアッパーの中で右投手の名前がぱっと出てこない」 中日の与田監督が試行錯誤を繰り返して作りあげた祖父江、福、マルティネスの勝利方程式はセ屈指だった。6回終了時点でリードした試合を37連勝した。里崎氏の順位予想の上位チームが中日なのは、この勝利方程式が理由だが、今季はマルティネスが開幕に間に合わない。巨人もストッパーのデラロサが来日していないが、昨季は安定感があった。今季は中川、ビエイラ、高梨、鍵谷、桜井あたりで当面の新勝利方程式を構築しようとしている。 阪神に恩恵があるーと里崎氏が断言できなかったのは、岩貞、岩崎のセットアッパーの左腕2人の調整がギリギリ開幕に間に合ったという状況と、右のセットアッパーが馬場や小林では頼りないと読んでのこと。7、8、9回の布陣で言えば、ヤクルトも、昨年は長谷川、最終優秀中継ぎタイトルを獲得した清水、ストッパーの石山で固まってはいたが、いかんせん、そこにつなぐまでの先発陣が弱い。シーズン通して最後を決めきれなかった広島はドラフト1位の栗林を守護神指名しなければならない状況にある。また横浜DeNAもパットンが退団、左腕のエスコバーは来日できていない。三嶋のストッパーは決定しているが終盤の締め方に不安が残る。 「先行、逃げ切り」の勝ちパターンを持つチームが有利だろう。9回打ち切りでは先取点が勝利への鉄則になるのかもしれない。昨年巨人は。先取点試合に勝率・804だった。里崎氏は、「先制点を取れることにこしたことはないが野球は9回トータルで考えるべき」と言う。 どのイニングで先取点を取るのかによってゲームプランは変わってくるが、9回打ち切りのルールによって代打を含めたベンチの早い仕掛けがトレンドになる可能性もある。 そうなると代打要員を増やす必要があり、ベンチ入りメンバーの投手と野手の振り分けにも変化が出てくる可能性もなくはない。昨年はコロナの影響による過密日程を考慮して従来29人だった1軍登録枠が31人、ベンチ入り人数も25人から26人に増えた。単純に投手一人を減らす選択肢も出てくるのだろうか。