2025年 賃上げはどこまで実現? 大幅賃上げできる企業とできない企業が分かれていく?
■2025年の春闘は?
労働組合の連合は、来年の春闘について、2024年同様、定期昇給分を含めて5%以上、中小企業では6%以上の賃上げを目安とすることを打ち出しました。連合傘下で、繊維産業やスーパーマーケット、介護・医療分野の労働者が多く加入する労働組合UAゼンセンは、2025年の春闘で、約6%という過去最大の賃上げを要求する方針です。 社員だけでなくパート、アルバイトも含めた全体の賃上げを求めるとしていて、パート労働者については7%の賃上げを掲げています。この7%という数字については、政府が掲げる最低賃金の目標を達成するには毎年約7%増が必要となることから、この要求は「けっして高いものではない」と主張しています。
■専門家は
日本総合研究所客員研究員の山田久氏は、物価高騰の中、実質賃金(実際に受け取る賃金から物価の影響を差し引いたもの)を上げるにはどうすればよいかについて、「企業が利益を労働者にも適正に分けることが必要で、春闘で賃上げを継続させることが重要だ」とした上で、価格転嫁の適正化で中小企業が賃上げする余力を高めることも必要だと述べました。 しかし、これらを実現しても実質的な賃上げにならない日本個別の事情もあるといいます。それは「交易条件」というもので、今の日本は貿易で稼ぐことができない状態になっていて、それが実質賃金がなかなか上がらない背景にあるということです。どういうことかというと、日本の企業はものを輸出する場合の価格をなかなか引き上げられず、大きなもうけにつながりません。 その一方で輸入品の価格は上がり続け、たとえば以前10万円で買えた品が10万円では買えず、結果として、より多くの日本の富が海外に流出してしまい、賃上げしても、実質賃金が上がらない構図になっているといいます。 そして、輸出価格が低い背景には、日本からの輸出品が電気機械や自動車などに偏っているという構造的問題があるということです。それらの品は中国などアジア新興国と競合していて、なかなか価格を上げられないのです。 一方、輸入する品目をみると、各国に比べて、日本は石油など燃料の輸入が突出して多いのが特徴です。各国がこの10年ほどで脱炭素化を進める中、日本はそれが進まず、化石燃料に頼る状況が続いています。価格の高い石油を大量に輸入する必要があり、円安が進むとますます影響が大きくなります。 山田氏は、実質賃金が上がらない背景として、産業構造やエネルギー問題が根幹にあるとして、これらを変える必要性を強調しました。 春闘について、山田氏は「結果的には、2024年と同じぐらいの数字になるのでは」という見通しを示しました。「大手企業は転職による流出引き留めなどのため、賃上げは必須で、問題は中小企業がどうなるかだ。賃上げできないでつぶれる企業も出て、新陳代謝、二極化が進むだろう。全体の賃上げ率の数字は5%程度で今後も定着する可能性もあるが、中身を見ることが大切で、中高年の賃金をどうするか、男女の賃金格差、中小企業への広がりが十分なのか、など、本当の意味で望ましい賃上げかというとまだまだ転換点だ」と指摘しました。