愛知の他ジムから風評被害苦情も…JBCがプロボクシング新型コロナ感染ボクサーの実名とジム名を公表か匿名かでジレンマ
プロボクシングのJBC(日本ボクシングコミッション)とJPBA(日本プロボクシング協会)が22日、オンラインで「新型コロナウイルス対策連絡協議会」を開き、前日、愛知県のジムで、2人のボクサーに新型コロナウイルスの陽性反応が出た問題について協議した。詳しい感染経路や、症状が出た時期などは明らかになっていないが、同ジムは11日まで営業を続けていたため、2人のうちの一人はジム内で感染した可能性が高く、濃厚接触者と特定された2人の関係者がPCR検査の結果待ちの状況だという。もし4人も感染者が出れば、恐れていたジム内でのクラスター感染化に発展していく危険性がある。 この日の協議会で議論になったのは、ジム名と選手名の公表問題だ。 JBCの安河内剛・事務局長は、「個人の特定をすべきかどうかに色々と議論もあった。ただ(新型コロナ感染者が公表されると)誹謗中傷もあり、基本路線は、個人情報を重視して非公表となった。ただ、ある程度、特定は必要でないか、という意見もあり、(本人らの)同意をとった上で、例えば、日本ランカーであるとか(発表できる部分までするということ)を検討している」と説明した。 新型コロナウイルスに関しては、感染者がいわゆる”コロナ差別”と呼ばれる被害にあうケースが少なくない。家族も含めて誹謗中傷を浴び、職場を追われた感染者の例もある。 その一方で「公衆衛生を最優先する」との立場から、感染者を特定することで、二次感染、三次感染の被害を食い止めるという必要もある。 安河内事務局長が、現在、検討しているのは、後者への配慮だ。 さらに、この日の協議会では、「愛知県のジム」としたことで起きている他ジムへの風評被害も問題になった。名古屋には、3階級制覇王者の田中恒成を擁する畑中ジムなど、世界王者を輩出してきた名門ジムが数多くあり、ジム名を公表しなかったことで、「あそこじゃないか」「名古屋のジムは感染リスクがあるから危険だ」との憶測を呼び、ただでさえ、新型コロナの影響で退会する会員が増えるなど、経営が圧迫されているジムに大きな被害を与えることを懸念する声が上がったのだ。 公表の有無についてJPBAから判断を一任されたJBCサイドは、さらなるジレンマに苦しむことになった。 これらの点にも配慮、折衷案として、ジムと感染したボクサーの同意を得た上で、ジムの大まかな所在地、ボクサーの戦績やクラスなどを発表することで、風評被害や、二次感染、三次感染を防止するための手立てにすることを検討しているという。