「ビフィズス菌」で「認知機能」がアップし、「脳の萎縮」が抑制された…「腸内環境」と「認知症予防」の関係を示した「衝撃の研究結果」
示された認知症と腸内マイクロバイオータの関連性
最近では、認知機能に対するプロバイオティクス(ヒトの健康によい影響を与える微生物)の効果についても研究が行われています。 例えば、小規模の臨床試験ですが、軽度認知障害の患者130人を対象に、プロバイオティクス候補である乳酸を産生するビフィズス菌の認知機能および脳萎縮への影響が解析されました。 具体的には、被験者をランダムに2つのグループに分け、200億個のビフィズス菌を含む粉末1包あるいは、ビフィズス菌が入っていない偽薬(プラセボ)の粉末1包を、1日1回24週間にわたって摂取してもらい、摂取前、摂取後8週間、16週間、24週間の4回、認知機能検査が行われました。 解析の結果、ビフィズス菌を摂取したグループは、プラセボを摂取したグループと比較して、現在の日時や時刻、場所や周囲の状況、人物などの情報から、自身が現在置かれている状況を理解する能力(見当識と呼ばれます)が、統計的に有意に改善していました。 また、ビフィズス菌摂取前と摂取後24週間目に脳の萎縮状態を評価した結果、ビフィズス菌摂取グループではプラセボ摂取グループと比較して脳萎縮の進行が抑制されていました(※参考文献4-5)。 認知機能と腸内マイクロバイオータの組成との相関関係についても解析が行われています。 例えば、男女597人(平均年齢55・2歳)に対して、認知機能検査と糞便中に含まれる腸内マイクロバイオータの組成が解析されました。解析の結果、認知能力の高さと特定の細菌の多さや腸内マイクロバイオータの組成の多様性に相関関係があることが報告されました(※参考文献4-6)。 これらの研究結果から、認知症と少なくとも特定の腸内マイクロバイオータや腸内マイクロバイオータの多様性、さらには腸内代謝物との間に相関関係があることがわかったのです。 ※参考文献 4-1 厚生労働省老健局「認知症施策の総合的な推進について(参考資料)」2019年6月20日 https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000519620.pdf 4-2 Tamada H et al., Frontiers in Neuroscience 16, 882339, 2022. 4-3 Vogt NM et al., Scientific Reports 7, 13537, 2017. 4-4 Saji N et al., Scientific Reports 9, 1008, 2019. 4-5 Asaoka D et al., Journal of Alzheimer's Disease 88, 75-95, 2022. 4-6 Meyer K et al., JAMA Network Open 5, e2143941, 2022. * * * 初回<なぜ「朝の駅」のトイレは混んでいるのか…「通勤途中」に決まって起こる腹痛の正体>を読む
坪井 貴司(東京大学大学院総合文化研究科教授)