二郎系、煮干、鶏醬油、町中華…元ラーメン店経営者が「潰れにくい」という視点で順位を付けた結果
■レベルの高い店でなければ集客には苦労する 集客力については、煮干ラーメンと同様に、熱狂的ファンの数は多くありません。 レベルの高い店を除いて、不便な場所での出店は集客に苦労するでしょう。 客単価について、比較的メジャーになったのが近年のため、類似メニューを提供する格安店が多く存在する状況にはなく、単価は落ち着いています。トッピングによる追加料金が得にくいのは二郎系や煮干ラーメンと共通ですが、客単価は煮干ラーメン以上で二郎系以下となるでしょう。 最後、仕込みについて、火加減の調整など、店舗独自の工夫はあるものの、鶏と水を寸胴に入れ、1~2時間火にかければそれなりのスープができます。その分ごまかしが利かないとの見方もできますが、体への負担は相対的に小さいといえるでしょう。 鶏醤油の総合評価は星10個となりました。 ■町中華が儲かるかどうかは経営次第 【町中華】 最後に町中華です。 ---------- ・原価率 ☆☆ ・集客力と回転数 ☆☆ ・客単価 ☆☆☆ ・仕込み ☆☆ ---------- 町中華では、ラーメン専業の店と異なり、食材を幅広く確保しておくことが求められます。 焼酎の水割りなど原価率10%を切ることが可能な商品もありますが、原価率にはバラツキがあり、またラーメン店に比べるとロスが発生する可能性が大きく、有利であるとも言い切れません。経営によって有利にも不利にもなり得るので、星2個の評価としました。
■アルコールが町中華の強み また集客力ですが、昨今は町中華人気が高まっています。ただ、ふらっと立ち寄れることが町中華の魅力の一つで、特定の町中華を目指して行動する人はまだ多くない状況ですから、立地や利便性が集客に大きく影響します。また、ラーメン店より滞在時間が長くなりがちです。 客単価について、町中華の強みは、比較した他ジャンルと異なり、アルコール提供が一般的であることです。アルコールは、種類によっては1杯でラーメン1杯分以上の利益を生むこともあります。利益を確保することを念頭に経営する場合、昼からお酒を飲む人が来店しやすいスタイルが望ましいかもしれません。目指す方向性によって客単価は変わるものの、ラーメン専業店より客単価では有利といえます。 ■町中華の仕込みは大変 最後、仕込みについては、提供メニューの種類が多いため、仕込み工程や食材準備の負担はラーメン店より大きくなります。また、アルコール販売状況が経営に大きく響くため、夜遅くまで営業する割合も多いです。昼夜ともに長時間働く必要があるため、負担は小さくないでしょう。 町中華の総合評価は星9個となりました。 ■ラーメン店経営は夢のある仕事 以上、「潰れにくい」という視点における私の評価は、1位鶏醤油、2位町中華、3位煮干ラーメン、4位二郎系の順となりました。 ラーメン店経営は肉体的負担が大きい仕事です。開店してから大幅に方向性を変えることは難しいので、金銭面だけでなく、体力面についても事前にシミュレーションをすることが望ましいです。 実際、私が再びラーメン店を経営するなら、現時点では鶏中華を選びたいと思います。 ただ、経営の厳しさは否定できませんが、ラーメン店経営は面白く、夢のある仕事です。 これから飛び込む人は、事前準備を充実させ、思わぬ損失を出さないように気を付けてください。 ---------- 石動 龍(いしどう・りゅう) 元ドラゴンラーメン店主、石動総合会計法務事務所代表 1979年生まれ。青森県八戸市在住。公認会計士、税理士、司法書士、行政書士。読売新聞社記者などを経て、働きながら独学で司法書士試験、公認会計士試験に合格。2020年10月に地元でドラゴンラーメンを開業し、店主として自ら店にも立つ。ワイン専門店vin+共同オーナー、十和田子ども食堂ボランティアとしても活動している。趣味はブラジリアン柔術(黒帯)と煮干ラーメンの研究。著書に『公認会計士試験 社会人が独学合格する方法』『司法書士試験 独学で働きながら合格する方法』(ともに中央経済社)がある。 ----------
元ドラゴンラーメン店主、石動総合会計法務事務所代表 石動 龍