<まる見えリポート>津工高ヨット部 支援を追い風に急成長 国スポで得点源に
佐賀県で10月に開催された第78回国民スポーツ大会(旧国民体育大会)セーリング競技で県勢は競技別総合8位と健闘した。中心となったのが県立津工業高校ヨット部。現役部員に加えて卒業生も入賞して競技得点獲得に貢献した。企業チームの撤退などで競技力の再構築が進む中、三重とこわか国体での活躍を期待されて平成27年に船出したヨット部が、周囲の支援を追い風に本県の得点源へと急成長している。 ■ 今年の国スポでは2人乗りの少年男子420級で同校2年の岡田海洋と3年の小河莉佑の両選手が優勝、3年の奥田涼雅選手が一人乗りの少年男子ILCA6(旧レーザーラジアル)級で4位入賞した。成年男子ILCA7(旧レーザー)級では卒業生の黒田浩渡選手(21)=ナブテスコ=が4位に入った。同校ヨット部の伊藤秀郎監督(39)によると平成28年の岩手国体以降、同部から毎年国体の入賞者を輩出しているという。 420級で優勝した2人は今年夏のインターハイ後に組んだ急造コンビだったが、同クラスで昨年秋の全日本選手権U―17優勝、国際大会にも出場している岡田選手がかじ取り役のスキッパー、180センチの長身の小河選手が艇の前方でバランスを取るクルーを務めて、同種目で県勢初の国体優勝を果たした。 別の選手と出場した今年のインターハイで10位だった小河選手は「高校最後のレースで優勝できて良かった」。新チームで主将を任される岡田選手は、佐賀国スポ後に開催の今年の全日本選手権でも同学年の渡邊陽斗選手とペアを組んで連覇を達成しており「(今後は)個人だけでなく団体でもインターハイの総合優勝を」と意気盛んだった。 ヨット部創設は平成27年。前年、県立高校の教員に採用され、同校が初任校となった伊藤教諭が同好会から立ち上げた。部員は初心者ばかりだったが、練習場所の津ヨットハーバーまで自転車で約15分の好立地に、鳥羽商船高専ヨット部OBで、社会人選手時代レーザー級で世界選手権出場などの経験がある伊藤監督の熱心な指導で、翌年の国体少年男子420級で6位に入り、全国大会で初入賞した。 練習環境の整備も余念が無く、県の協力も受けながら創部以来10艇以上の新艇を調達している。生徒らに設備の面でハンデを背負わせたくないと監督自ら独自のスポンサー開拓に力を入れる。今年10月には、昨年から支援を受けている津市芸濃町の製造業「ダイソウ工業」の川口宗一社長を同校に迎えて、新艇購入支援金の贈呈式を開いた。 競技経験者が同校に入学する例も増えてきた。小2からヨットを始めた神奈川県出身の岡田選手は、同校のヨット部に進むため、中学卒業後、単身三重に来る決心をした。中学までは週末、地域のヨットクラブで練習してきたが「学校から終わった後ヨットに乗れるのは夢みたいな環境。部活で集団行動することで視野の拡大にもつながる」と力を込める。 進学先や就職先で競技を続ける卒業生も出てきた。今年のパリ五輪に向けた代表選考レースではヨット部OBの黒田選手が男子ILCA7級で最終選考に残った。「高校で競技を楽しんでもらうことが一番」と話す伊藤監督だが「次のステージで活躍できる選手が生まれるとうれしい。最終的にはジュニアの育成にも関わることができれば」と夢を描く。