レスリング女王・須﨑優衣「一番へのこだわり」と勝負強さの原点。家族とともに乗り越えた“最大の逆境”と五輪連覇への道
試行錯誤した3年間。目指すのは「圧倒」と「圧勝」
――初出場の東京五輪は、4試合とも、相手に1ポイントも与えずテクニカルフォール勝ちという圧倒的な強さで金メダルを獲得しました。追われる立場になりましたが、この3年間の優衣さんの成長についてはいかがですか? 康弘:エリートアカデミーを卒業して社会人になって、学生時代とは違った背負うものができた中で、自分で相手を分析して、練習内容も考えるようになりました。今まではどちらかというと指導を受けながら強くなってきた形ですが、この3年間は、フィジカル面やメンタル面の強化など、自分なりに試行錯誤しながら失敗も成功もあった中で、自分なりにいい形でオリンピックを迎えられるような状況に持ってきたのかなと思います。 ――食事の面では、今も和代さんがサポートされる部分はあるのですか? 和代:今は独学で栄養について勉強して、自炊も頑張っているみたいですが、週に1、2回、会いに行く時にはご飯を作ってあげています。 ――パリ五輪では世界各国の挑戦者たちに対して、どんなレスリングを見せてほしいですか? 康弘:4月のアジア選手権は、ある意味ライバルから研究されていることがわかった大会だったと思うので、それから本人も惜しまず努力をして、今回のオリンピックでは圧倒して圧勝したいと言い続けてきました。東京五輪が終わってから3年間の努力や一日一日積み重ねてきたことをすべて出し切って、悔いのないように戦ってもらいたいですし、「やることをやれば結果が出る」という気持ちで、積極的に自分のレスリングを貫いてほしいですね。「勝負は時の運」という言葉もありますが、悔いを残さないように、やりきってほしい。もちろん、優勝はしてもらいたいですけれどね。 ――和代さんはいかがですか? 和代:東京五輪の時は、会場となった幕張メッセの近くのホテルの1室から家族全員でテレビで応援していました。優勝した後は、夜遅くに本人がホテルに戻ってきてから、電話でメダルの報告をしてもらったのを覚えています。今回は3人でパリに行って応援します。今までやってきたことを全部出し切って、最後は自分を信じて頑張ってもらいたいですね。レスリングを楽しんで、パリの舞台を楽しんでもらえたらと思います。 ――麻衣さんは、優衣さんにどんな声をかけたいですか? 麻衣:試合前は「本当に自分のことを信じて」ということを必ず伝えるようにしていて、そうすると、妹も必ず「やりきってくるね」っていう返事をくれます。それと、テレビ電話で表情を見て、「大丈夫だな」っていうことも確認しています。有観客でのオリンピックは初めてなので楽しみにしていると思いますし、東京大会の時とはまた違った会場の雰囲気中で戦うオリンピックを楽しんでほしいです。今まで練習してきたことをすべて出し切ることができれば、絶対に結果はついてくると思うので後悔のないように戦ってほしいですし、優衣らしく試合をしてほしいなと思います。 康弘:帰国してから落ち着いたら、またみんなで食事会をしたいですね。そこで優勝を祝えたらうれしいです。 ――女子レスリング界をリーダーとして引っ張っている優衣さんに、どんな存在になってほしいと期待されますか? 康弘:競技を続けるのであれば、常に進化し続けて強くなってもらいたいというのはもちろんですが、ここ数年は海外で武者修行をする中で、ロシアに行ったり、キルギスに行ったりと、いろんな国でレスリングという共通言語で友達を作ってきました。今後もレスリングを通して、日本だけでなく、世界中の人たちと交流を広めて、自分らしく活躍し続けてくれればいいなと思っています。 <了>