休憩なし! MCなし! BRAHMAN4時間ぶっ続けの結成30周年記念ライブをレポート
続いて4thアルバム『ANTINOMY』。しかし、アルバム再現ライブを一回のパフォーマンスで3枚分も聴けてしまうなんて、なんて贅沢な空間なんだ。『超克』に対し、『ANTINOMY』はライブではあまり披露されなくなった楽曲も多く、この場の貴重さ、希少さが増していく。この日の客層はいつも以上に年齢層の幅広く、自分の席のまわりには本作に思い入れの強い世代が多かった。明らかなテンションの違いが伝わってくる。そして、ときおりモニターに映し出されるメンバーの姿には、少しずつ悲壮さが増していく。だが、まだ折り返し地点、ここからはBRAHMANもファンも未体験の領域だ。 4度目の暗転~オープニングSE。さらにアルバムを遡り……という安易な予想はすぐに裏切られた。ここからは『THE MIDDLE WAY』以前の楽曲でセットリストを組む、要するに“あの頃”のBRAHMANが再現されたステージとなった。もう先を予想するとか、終わり方を想像することも馬鹿馬鹿しい、演奏される曲、一曲一曲をただ楽しむだけだ。恐ろしいことに、ファンのテンションも開始当初とまったく変わらない。彼らも30周年を祝福する声を止めるわけにはいかないのだ。ライブは3時間を越えようとしている。人間の集中力は90分が限界、なんて言った人はいったい誰だ。メンバーは常軌を逸した集中力で、ブレることなくビートを刻み続ける。ファンも次々披露される曲に集中し、引き込まれ、パフォーマンスに呼応する。モニターに映るメンバーの姿は悲壮さを通り越し、もう笑顔もない。後半をこんなセットリストにしたら、それはそうだろう。しかし、肉体的にも精神的にも追い込まれているかもしらない彼らには、ある種の尊さが宿っていた。見せ方や虚勢など、不必要なものを持つ余裕はなく、無駄なものが削ぎ落とされた美しさ。ただただ、楽曲をパフォーマンスすることに徹するシンプルでストイックな姿は、辿ってきた30年の足跡、そのままのようにも映った。 「ラスト! TONGFARR! 生きてっか?」ついにメンバーもファンも走りきった。いつも以上に神々しいギターフレーズに彩られ、4時間72曲は劇的な終幕を告げる。しかし大団円と思いきや、RONZIが突然、激しいドラミングを開始する。TOSHI-LOWは「マジかよ!?」というジェスチャー。でも明らかにまんざらでもない表情。なんてBRAHMANらしい展開だ。初期にリリースしたミニアルバム収録の「FLYING SAUCER」、そして「BEYOND THE MOUNTAIN」「ARTMAN」と、なんと3曲を追加。最後は楽器を放り投げ、ステージを去った。やっぱり綺麗には終わらない、いや、4時間75曲を繰り広げても、まだまだ終わりは来ていないのだ。その後は、余韻冷めやらぬなか新曲「順風満帆」のPV、そしてニュー・アルバムとツアーが発表され、会場は大きな歓声に包まれた。 MCも、休憩も、ほぼなし。終わってみれば、まさに4時間ぶっ続けのライブ。 30年間の活動で、アルバム曲72曲が多いのか少ないのか。それはわからない。しかし、すべてが必要不可欠なピースで、そのすべてがあって彼らもファンも、今ここにいる。それをメンバー、スタッフ、ファンで作り上げ、体感し、共有する。かつてない高揚感と余韻と心地いい疲労感を残した、鮮烈な4時間だった。 Text:阿部慎一郎 <公演情報> 『BRAHMAN 六梵全書 Six full albums of all songs』 2024年11月4日(月・祝) 横浜BUNTAI 【セットリスト】 01. 真善美 02. 雷同 03. EVERMORE FOREVER MORE 04. AFTER-SENSATION 05. 其限 06. 今夜 07. 守破離 08. 怒涛の彼方 09. 不倶戴天 10. ナミノウタゲ 11. 天馬空を行く 12. 満月の夕 13. 初期衝動 14. 賽の河原 15. 今際の際 16. 俤 17. 露命 18. 空谷の跫音 19. 遠国 20. 警醒 21. 最終章 22. JESUS WAS A CROSS MAKER 23. 鼎の問 24. 霹靂 25. 虚空ヲ掴ム 26. THE ONLY WAY 27. SPECULATION 28. EPIGRAM 29. STAND ALOOF 30. SILENT DAY 31. ONENESS 32. HANDAN'S PILLOW 33. YOU DON'T LIVE HERE ANYMORE 34. CAUSATION 35. FIBS IN THE HAND 36. 逆光 37. KAMUY-PIRMA 38. THE VOID 39. BASIS 40. SHADOW PLAY 41. DOUBLE-BLIND DOCUMENTS 42. SHOW 43. GOIN' DOWN 44. SEE OFF 45. CHERRIES WERE MADE FOR EATING 46. BOX 47. DEEP 48. NO LIGHT THEORY 49. 時の鐘 50. FROM MY WINDOW 51. FAR FROM... 52. BED SPACE REQUIEM 53. SLIDING WINDOW 54. THAT'S ALL 55. THERE'S NO SHORTER WAY IN THIS LIFE 56. CIRCLE BACK 57. NEW SENTIMENT 58. LOSE ALL 59. Z 60. A WHITE DEEP MORNING 61. TREES LINING A STREET 62. HIGH COMPASSION 63. LAST WAR 64. MIS 16 65. (a piece of) BLUE MOON 66. BYWAY 67. PLASTIC SMILE 68. PLACEBO 69. ANSWER FOR… 70. ARRIVAL TIME 71. FOR ONE'S LIFE 72. TONGFARR 73. FLYING SAUCER 74. BEYOND THE MOUNTAIN 75. ARTMAN 76. 順風満帆 Music Video <リリース情報> ■「順風満帆」 配信中 ■7thアルバム 『viraha』 2025年2月26日(水) 発売