史上初「アニメの教科書」が発売、アニメーター向けの検定も実施 キーマン・西位輝実氏に聞く、検定実施の理由とは
デジタル全盛の時代にアナログで行う理由
――検定は紙と鉛筆で行われます。デジタル全盛の時代になぜ紙なのかという指摘もネット上で上がっているようですが、アナログにこだわっているのはなぜですか。 西位:今回実施する5・6級は、新人のアニメーターはもちろんですが、アニメの仕事に興味がある中高生や、アニメの仕事を諦めていた中高年もターゲットにしています。何と言っても、アナログは鉛筆と紙があれば簡単に始められ、お金がかからないのがメリットです。プロ志望から、ちょっと試してみたいな、という人も気軽に参加できます。パソコンやタブレットなど、高価なデジタルの機材をそろえるのは中高生の親の財布にはきついですし、試しにやってみようかな、というお気軽さも大事にしたかったのです。そして、最近では学校教育の現場でも紙で学んだほうが、記憶に残りやすい、成績がよくなるという研究結果も発表されています。絵も同じだと考えています。 ――現に、アナログから始めたほうが、デジタルにスムーズに移行できると言っているアニメーターもいました。 西位:紙で素材の作り方を覚える方がわかりやすく“なぜそうなのか“という理由が明確にわかるんです。それに、絵を描くという行為の根源的な楽しさが感じられるのが、紙の大きなメリットではないでしょうか。若い世代にはその楽しさを感じてほしいですね。また、生成AIが普及しつつある時代、紙でもデジタルでも描けるのは絵描きとして強い武器になると私は思っています。 ――検定の教科書と聞くと難しいイメージですが、イラストや漫画も入っていてわかりやすいですね。 西位:編集にあたって、声優さんをはじめ、アニメ業界外の声をたくさん取り入れています。アニメーターの仕事を具体的に説明すると、声優さんから「凄い!」という発言が連発されていました。私もそう思います。黙々と絵を描いている人たちが日本の文化を生み出し、3兆円産業を生み出しているのですから。でも、業界の中の人たちはその凄さがわかっていないんですね。アニメーターの地位の向上には、業界の人が自分たちの仕事の凄さを自覚することから始める必要があります。