袴田さん再審結審、判決は9月26日 検察が再度 死刑求刑 弁護側無罪主張、姉ひで子さんが最終意見
現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人が殺害された事件で死刑が確定した元プロボクサー袴田巌さん(88)の再審第15回公判が22日、静岡地裁(国井恒志裁判長)で開かれ、検察側は一審同様に死刑を求刑した。弁護団は無罪判決と謝罪を求め、証拠の捏造(ねつぞう)は明らかだとして「捜査機関の不正、違法な行為をはっきりと認定することが必要」と指摘。心神喪失の状態で出廷が免除された袴田さんに代わり、姉ひで子さん(91)が補佐人として「弟巌を人間らしく過ごさせてくださいますよう、お願い申し上げます」と最終意見を述べ、結審した。判決は9月26日に言い渡される。
死刑囚の再審は5例目。先の4例でも検察側は死刑を求刑したが、全て無罪判決だった(いずれも検察は控訴せず)。袴田さんも無罪になる公算が大きく、実際に言い渡されれば1989年に静岡地裁で無罪の宣告を受けた「島田事件」の赤堀政夫さん=今年2月に94歳で死去=以来となる。 再審公判では第2次再審請求審と同様、事件から1年2カ月後に現場近くのみそタンクで見つかったシャツやズボン、ステテコなど「5点の衣類」が主な争点となった。発見当時、衣類は生地の色が残り、ついた血痕も赤みを帯びていた。 弁護団は最終弁論で、検察側の主張について「全くの蒸し返し」と批判。請求審で「無罪を言い渡すべき明らかな新証拠」と評価された「みそ漬け実験」の結果を踏まえ「1年以上みそ漬けにすれば生地のみそ色は濃くなり、血痕の赤みは消える」と説明した。血痕が黒色化する化学的なメカニズムは専門家の鑑定や証言で解明されているとし、検察側が否定するために出した法医学者7人の共同鑑定書を「赤みが残る抽象的な可能性を指摘しているに過ぎない」と切り捨てた。
衣類の血痕と袴田さんのDNA型は一致しないとした鑑定結果も袴田さんの無実を示すとしたほか、衣類以外の証拠についても証明力を疑問視。過去に県内で起きた「二俣事件」や「島田事件」などを例に挙げて捜査機関による証拠捏造は繰り返されてきたと訴え、地裁に対し「5点の衣類や自白、その他の証拠が捏造だったと認め、証拠から排除することをちゅうちょしてはならない」と促した。 一方、検察側は論告で、5点の衣類を除いても袴田さんの犯人性を示す証拠が多数あると主張した。その上で衣類を犯行着衣だと改めて位置づけ、衣類の色調は「観察条件によって異なる」と述べた。捏造については「どう考えても実行不可能」と反発した。証拠を総合的に評価すると、袴田さんが犯人であることを指し示していると強調。死刑の求刑に関し「心神喪失の認定は量刑事情を変更させるものではない」とした。 論告に先立ち、被害者遺族が「真実を明らかにしていただきたい」と記した書面を検察官が読み上げた。 国井裁判長は判決公判について、地裁で最も大きな法廷を使うことを決めた。