沼津の精神科病院で患者死亡 遺族が損賠提訴、刑事告訴も 「監禁、適切な診療受けさせず」
沼津市の精神科病院で入院患者だった男性=当時(80)=を監禁し、適切な診療を受けさせずに放置して薬剤性肝障害などで死亡させたとして、遺族は18日、病院の運営法人に約5600万円の損害賠償を求め静岡地裁沼津支部に提訴した。遺族は監禁致傷と業務上過失致死の疑いで院長に対する告訴状も沼津署に提出し、「入院した1カ月間に何が起きたのか、真実が知りたい」と訴えた。 訴状などによると、男性は脳梗塞の後遺症があり、服薬調整のため2021年10月に同院に入院した。2日後、病院は家族の同意を得ないまま、窓のない個室に施錠して閉じ込める医療保護入院に移し、男性は重度の精神障害を負った。過剰な薬物投与で精神障害が悪化して男性は薬剤性肝障害を発症。低栄養状態に陥り床ずれが生じたが、病院は診療を受けさせなかった。 面会させない病院の対応に不信感を抱いた家族は同11月に転院させたが、男性は翌12月に死亡した。 伊東市在住の遺族5人と代理人の弁護士は提訴後、静岡市内で会見を開いた。男性の息子(42)は「入院中は病院側から『元気にしている』と説明されたが、実際は寝たきりでうそをつかれていた。父はなぜこんな死に方をしなければいけなかったのか」と悔やんだ。 病院は「訴状が届いていないためコメントは差し控える」とした。 静岡県は23年4月、職員による入院患者への暴行があったとして、病院に対し、精神保健福祉法に基づき改善を求める指導をした。
静岡新聞社