津田健次郎 「人生のどん底を味わって腹をくくった」表現者としての強い意志を語る
11月27日(水)に開催された「第53回 ベストドレッサー賞」の芸能部門で、声優・俳優の津田健次郎が選ばれた。 【写真集】津田健次郎が、大人の色気漂うワイルドな姿を披露! 無造作に髪をかき上げ新たな一面を見せた。
「“表現する”と“生きる”は、自分のなかで同義なんです」
受賞者たちのインタビューを収録した『ベストドレッサー・スタイルブック 2024』では、津田が表現者としての気概を語っている。その一部を抜粋して紹介する。 「20代の頃はミニシアター系映画がブームで、ウォン・カーウァイ監督やジム・ジャームッシュ監督など、個性的なつくり手が賞を獲っていた時期。当時の僕はお金はなかったけれど時間だけはあったので、人生のなかで最も映画を観た時期でした。最初は舞台俳優としてデビューしたものの、演劇界のなかで落ちこぼれて、その輪の中に入れなかった。いま思えば勢いや熱意はあったけれど、それをどう表現すればいいのかわかっていませんでした」 現在のマルチな活躍ぶりからは想像がつかないが、津田は何度も「自分はきわめて不器用なんです」と語る。不器用かどうかはともかく、少なくとも常に自分の表現と真っすぐに向き合ってきたことは間違いない。 「格好つけた言い方になるけれど、自分にとって“表現する”ことと“生きる”ことは同義に近いというか、そう思い込んでいる節がある。なので、芝居をやめるという発想はなかったですね。まったく食えなかった20代の頃のある日、人生の底を打つというかピークに達した瞬間があって、そのときに腹をくくったんです。この道に入ったときから食えないことは覚悟していたので、たぶん生きることそのものに対して腹をくくったのかもしれません。そうやって開き直ると、芝居も腹が据わって線が太くなっていきました。若い頃にたくさんの映画に触れたことと人生のどん底を味わって腹をくくった経験が、いま表現と向き合うにあたっての自分の基礎になっているように思います」 そう語る津田の声は、まるでささやいているかのように小さい。それにもかかわらず、なぜかスタジオ内の物音にかき消されることなく、しっかりと耳に届く。そんな希有な声質こそ、津田が表現者として生きるための最初の突破口になった。 「アニメの『遊☆戯☆王』や『テニスの王子様』でアフレコを担当したあたりから、芝居が仕事として成り立つようになりました。ですから、声の仕事にはとても感謝しています。俳優としてデビューしましたが、声優であろうが俳優であろうが〝芝居〟であるという根本は変わらない。もちろん使うテクニックに違いはあるけれど、舞台でも200人規模の小屋と1000人を超える劇場とでは、考え方や演じ方が違います。極論を言えば、ジャンルにかかわらず仕事はすべてやるべきことが異なるし、〝芝居をする〟という点では常に同じ。だから自分自身はマルチに活躍している自覚はなくて、あくまで〝表現〟という分野で同じことを続けているつもりです」