全国で半減するガソスタ、災害・過疎対策の切り札と注目される「どこでもスタンド」の存在
ガソリンスタンドがなくても、タンクローリーがあればいつでもどこでもガソリンを供給できる移動式給油機「どこでもスタンド」。能登半島地震の被災地で、深刻な被害を受けたガソリンスタンドに設置されて8~11月の間、燃料供給を続け、当地の復興に大きく貢献した。機器を開発したのは、兵庫県姫路市の燃料供給会社「横田瀝青(れきせい)興業」。この期間中に、ローリーだけでなくドラム缶との直結でも給油できるよう改良し、きめ細かな運用が可能に。被災地だけでなく過疎地を救う「切り札」としても期待がかかる。 【写真】どこでもスタンドを使った仮設給油所。タンクローリーからの直結でガソリンを供給した ■全面改修に3カ月「油を止めるな」 石川県輪島市の能登空港近くにあるガソリンスタンド「のと空港前セルフ給油所」。今年1月の地震で被災し、地下タンクの1つが使用不能になって営業を休止。応急処置を施して3月に再開したものの、本格的な修理をする必要があった。 全面改修には約3カ月かかるとされたが、空港周辺に他に給油所はない。「空港関係者をはじめレンタカー業者や観光客の利用だけでなく、空港内には消費生活センターなどの行政機関も複数あり、自治体からも『営業してほしい』と強く要請された」。給油所を経営する「協和石油販売」(金沢市)の中市隆幸社長(49)が話す。 改修中の燃料供給をどうするか-。悩んでいた6月下旬、中市社長はどこでもスタンドの存在を知った。8月16日から休業して工事に入ったが、8月18日に移動式給油機「どこでもスタンド」が到着。駐車場に横付けしたローリーとスタンドをつなぎ、再び営業することができた。 横田瀝青興業は、ローリーよりも少ない量のガソリンを詰めたドラム缶をどこでもスタンドと直結させる器具を開発。9月中旬に現地に届けられた。 「長期休業を覚悟していたが、どこでもスタンドに助けられた。復旧・復興に携わる車両の利用も多く、『油を止めるな』という思いだった」と中市社長。「当地の規模ではローリー1台分のガソリンは持て余してしまい、ドラム缶で対応可能になったのはとても大きかった。ローリーがふさわしい被災地、ドラム缶がふさわしい被災地がそれぞれにありそうだ」と振り返る。 11月中旬に改修工事を終え、仮設スタンドの営業も終了。12月2日からどこでもスタンドは、石川県珠洲市内にある同社の別の給油所で活用されている。