どうした品川、嫌われ者の涙
すごく辛辣なコメントも来る。でもドリフターズの「志村、うしろ」と一緒なんじゃないか
――ネットで誹謗中傷されることにはどう思いますか。 品川: 俺はね、いちおう芸能人みたいなことをやらせてもらっているから、(誹謗中傷と)付き合っていかなきゃいけないんだろうなと思います。最近ぼくネットでゲーム実況をやっているんですね。すると「おい、ヘタクソ!」とコメント欄に書かれるんです。「いつになったらうしろ見れるようになるんだよ」「だからやられるんだよ」とめちゃくちゃ辛辣なコメントが来る。でもこれ、いま字になっているからとんでもない凶器に見えるけど、相手は小学生かもしれない。だとしたら「志村、うしろ」と一緒じゃないですか。 ドリフターズを見に行った子どもが「志村うしろ、志村うしろ」と爆笑してましたけど、コメント欄に「品川、へたくそ」とか「品川、うしろ見ろよ」と字で書いている。ぼくらが子どものとき「志村、うしろ」と騒いでいたのと同じじゃないか。ゲームに参加する若い子を想像してみたんですけど、ひょっとしたら本当に憎しみを持って書いている人って1%に満たないかな、って思ったんですよね。ネットで攻撃されたら、自分だって傷つきます。けど冷静に考えてみると、あまり真剣に受け止めすぎないほうがいいのかも。ネットのいじめは深刻な問題ですけど、経験上言えるのは、自分を守るうえでそんなふうに思考を変えてみるというのも必要じゃないかな。
試写会で流した涙。あらためて気づかされた「人とのつながり」
――そういえば品川さんの最新映画はクラウドファンディングで制作。支援者招待の試写会舞台挨拶で涙していましたよね。斜に構える印象があったので、ちょっと驚きました。 品川: いやいや、外では絶対泣かないけど、うちではテレビ『はじめてのおつかい』を見て号泣しているんです!(笑) けど、なんだろう、今回はクランクアップで初めて泣きました。むろん自分の作品に等しく思い入れはありますよ。デビュー作『ドロップ』は小説が売れていたし、映画会社がボンと2億円の制作費、3億円の宣伝費を用意してくれて。けっきょくそれが当たり前だと思って、これまで映画を撮っていたんですね。けれど今回は1000万円弱の予算。限られた制作日数で節約して撮影するしかない。その苦労は当然だとしても、クラウドファンディングは「どんな映画を作るかわからない」「出演者もわからない」、ただ「品川が撮る」というだけで、お客さんがお金を出してくれたわけじゃないですか。一口1500円を出してくれた人の重みが、それが、重たいんです。クラウドファンディングは身内である芸人も参加してくれて、俺、自分から告知したわけじゃないのに、相方の庄司やキングコングの西野、ブラマヨの小杉さんとか大勢が進んで支援してくれた。またこれまで一緒に映画を作ってくれた仲間もスタッフとして裏方をやってくれたし、出演もしてもらった。普通、メディアってギャラをもらって出るのが当たり前なのに、お金を出して出演してくれるって、めちゃくちゃアツい…。まあ、それがクラウドファンディングの良さなのかもしれませんが、とにかく人がいっぱい集まってくれた。 それとまだ有名とは言えない主役のEMILYをはじめとする若い俳優に「売れたい」という気持ちがあって、自分が若かったときのことを重ねてしまう。がんばれ、俺もがんばる、となりますよね。だから、そうしたすべてが熱量となって、映像にこもっているんじゃないかと思います。コロナの影響で公開が延期になって、どこか記憶のようになりかけていたのですが、こうやってお客さんやみんなが待ってくれていた。だから拍手のなか、感極まってしまったのかもしれません。仕事が減っていたときでも、慕ってくれる後輩や声をかけてくれる友人、ぼくを売ろうとしてくれるマネージャーなど多くの人の顔が頭のなかに浮かんでくる。あらためて知ったというか、知らされたというか、人とのつながりこそが、ぼくの宝物ですね。