なぜヒグチさんは大病してもフェニックスのように回復するのか。「手術後、ベッドでもう助からないと泣いていたら猫が…」樋口恵子×坂東眞理子
総務省が公表した資料「統計からみた我が国の高齢者」によると、総人口に占める65歳以上の割合が過去最高の29.1%と推計されるそう。そこで今回は、「人生100年時代」を楽しく生き抜くための知恵が詰まった書籍『人生100年時代を豊かに生きる ヨタヘロしても七転び八起き』より、評論家の樋口恵子さんと昭和女子大学総長の坂東眞理子さんの対談をお送りします。 【写真】「らぷらすフェスタ講演会」で対談する樋口さん、坂東さん。終始なごやかな雰囲気でときに笑いも * * * * * * * ◆大きな病気 坂東 89歳での乳がん。驚きましたが、今はすっかりお元気になられたようで安心しました。 樋口 お医者さんがお上手だったのでしょう。手術そのものは2時間半程度で終わり、麻酔から覚めたときもちっとも痛くなかったんです。メスを入れたのですから、1晩か2晩はうなる覚悟をしていたんですけれどね。その後の回復も順調で、先日も半年に一度の検診を受けたばかりですが、まったく問題はありませんでした。 坂東 長くお付き合いさせていただくなかで、健康に関してもこれまでいろいろなお話をうかがいました。確か子どもの頃には肺結核と腎盂炎。それから70代でも大きなご病気をされたそうですね。 樋口 はい。77歳のとき、感染性胸腹部大動脈瘤(かんせんせいきょうふくぶだいどうみゃくりゅう)というひどい病気をいたしました。お腹のあたりの大動脈にできた瘤(こぶ)を3つも切除してまた塞ぐという大手術でした。医学ってすごいものです。ただ、乳がんのときとは違って、あれは本当に痛かった。痛くて、痛くて泣きました。
◆病気をして猫に慰められる 樋口 ですが、おかげで思いもよらぬ体験をいたしました。猫が素晴らしいケアラーだという事実に立ち会ったのです。 坂東 まあ、そうなんですか。樋口さん、猫がお好きでずっと飼っていらっしゃいますものね。 樋口 ペット自慢なら3時間でも4時間でもおまかせください(笑)。ともかく、術後の私は家のベッドに横たわり、猫をかき抱いてさめざめと泣いておりました。「おかあたんは、死にそうだよぉ、もう助からないよぉ」と。 すると、猫が私の右腕を自分の前足で挟み込み固定すると、いたわるようにペロペロと舐めはじめるではありませんか。そのうち皮膚が真っ赤に腫れ上がって、「もういいんだよ」とやめてもらいましたが、猫のなんと利口なこと! 坂東 言葉は通じなくても、飼い主の痛みがわかるんですね。 樋口 猫にさえ哀れまれ、「これで治らずにおられるか!」と立ち上がることができました。ペットを飼っている方がいらしたら、体がおつらいとき、どうぞこの話を思い出してください。「猫に舐められてヒグチは元気になったらしい。うちは犬だからもう少し長生きできるかも」などと。そんなふうに考えるだけでも、気持ちがラクになるのではないでしょうか。 坂東 樋口さんの場合、大病されても、いつもフェニックスのように回復される。なぜなんでしょう? 樋口 病気に慣れているんでしょうね。転びやすいけれど、立ち上がりやすい。これも一つの生き方です。 坂東 確かに、人生つねに順風満帆というわけにはいきません。でも、たとえ転んでもまた立ち上がればいい。まさに七転び八起きの精神ですね。
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