ロンドンで感じた「伝統とポップカルチャーが融合するニッポン」への憧れ
経産省のクールジャパン政策課と戦略デザインファームBIOTOPEが協働で実施したリサーチ『海外都市から見た日本ブランドの今と今後の可能性』が2024年5月に発表された。 【画像】英国で販売されるユニークなラベルが貼られた日本酒 本連載では同リサーチに参加した現地リサーチャーたちと共に、海外のそれぞれの都市で日本はどのように評価されているのか、さらに解像度を上げて考察していきたい。 今回はロンドンからの視点を、現地の情報に詳しいリサーチャーの田房夏波が紹介する。ロンドンで見えてきた「伝統とモダンカルチャーが共存する」日本のユニークさとは? 日本文化は海外でどのように受け入れられているのか? 初回インタビュー記事はこちらから。
日本に「圧倒的にポジティブ」なイメージ
「日本に対してこれだけ良いイメージがすでに広がっているというのに、なぜそんな調査をする必要があるのか?」 経産省のクールジャパン政策課と取り組んだリサーチ「海外都市から見た日本ブランドの今と今後の可能性」に対する、ロンドンの友人たちの反応だ。 海外経験のある読者のなかには、現地の人に「日本から来た」と話した時に「いいね!」「私もいつか日本に行ってみたい」といった反応をもらったことがある人も多いだろう。 私も例に漏れず、ロンドンで暮らす3年の間に、そうしたやり取りを数えきれないほど繰り返してきた。 どこまでが社交辞令なのだろうとずっと気になっていたが、このリサーチでヒアリングをした現地有識者の言葉を借りれば、英国での日本に対するイメージは「圧倒的にポジティブ(overwhelmingly positive)」であるようだ。
英国と日本の文化交流
もともと英国と日本は相互に文化的な影響を与え合ってきた。特に19世紀にはジャポニスムが流行し、浮世絵のデフォルメされた描き方に代表されるような日本特有の「遊び心」に、英国の多くのクリエイターが影響を受けた。 そのインパクトは大きく、いわゆるゲイシャ、フジヤマ、ニンジャのように、ステレオタイプ的な日本へのイメージはいまでも現地で健在である。 一番有名なところで言えば、葛飾北斎の富嶽三十六景『神奈川県沖浪裏(海外では「The Great Wave」として知られる)』を思い起こさせる海や波、鯨、龍といったモチーフは、現代の英国に暮らす人たちにとっても「日本らしさ」を感じさせるようだ。 アートの業界でもそれらのモチーフを取り入れた作品がよく売れるようで、日本酒の販売店でもラベルに鯨が描かれたものが人気とのことだった。 一方で、現代的な文化への関心も高まっている。ロンドンで生まれ育ったZ世代の友人はアーティストのきゃりーぱみゅぱみゅの動画が小学校で流行ったのが日本との出会いだったと言うし、それより少し上の世代になると「ポケモン」「村上春樹」といったキーワードが登場する。 英国ではネットフリックスでジブリ作品が視聴できる。ロンドンの劇場では『となりのトトロ』や『千と千尋の神隠し』の舞台版が大盛況となった。 食の分野でも、寿司や天ぷらだけではなく、ラーメンや抹茶、カツカレーなどが定着し、CoCo壱番屋や丸亀製麺といった日本の外食チェーンもロンドンを中心に店舗を増やしている。 英国にいながらにして、多様な「日本」に触れられる機会が格段に増えているのだ。