ロンドンで感じた「伝統とポップカルチャーが融合するニッポン」への憧れ
産業革命の国から見た日本の魅力
これだけ日本への関心が高いのだから、英国から日本へ旅する人が右肩上がりに増えているのは自然なことだろう。 では日本を訪ねた際に、彼らはどのような点に惹かれ、何を楽しんでいるのだろうか。 私がロンドンでのリサーチなどを通して出会った人たちからは、日本の都市と田舎、雪国と南国など、コントラスト豊かな地域ごとの魅力を楽しむ声が驚くほど多く挙がった。 これに関しては、英国が産業革命の起こった国であることが大きく影響していると思われる。 18世紀半ばから19世紀にかけて工業化が一気に進み、地域ごとの特色ある郷土料理や手仕事、サービス、そして人々の暮らしは、場所を越えて画一的で均質なものに置き換わっていった。 英国各地には地域の魅力となる遺跡や建造物が保存されており、観光名所になっているケースも多くあるが、あくまで過去の遺物として維持されているものが多く、地域の地場産業としていまも「生きて」いるものは稀だ。 実際、現役のテキスタイル産地や工房を探して訪ねたことがあるが、ずいぶんと骨が折れた。現在まで残っているとしても、独立系のレストランやブランド、個人のアーティストの工房などが多く、地域の産業としての打ち出しよりも、個々の企業やブランドが歴史をつないでいるケースが目立つ。 たとえば、焼き物で知られるストーク=オン=トレントという街があるが、ウェッジウッドなど個々のブランドごとのカラーが強いので、日本の有田焼や信楽焼のように「地名+焼」の名で知られるものづくり産地を訪ねるのとはまた違った感覚がするのだ。 そんな国から日本を見た時に、日本各地であらゆる有形無形の文化が数百年単位で受け継がれ、いまなお人々が工夫を重ねながら深掘りを続けていることが、驚きをもって受け止められるのだろう。 私たちがそれぞれの街で、過去から受け継がれてきた歴史や文化のユニークな魅力を土台に、現代、そして未来の文化を耕し続けることこそが、日本ブランドの真価となっていくに違いない。(後編に続く)
Natsumi Tabusa