ロンドンで感じた「伝統とポップカルチャーが融合するニッポン」への憧れ
伝統と地続きの現代カルチャーへの関心
日本に対するポジティブなイメージとしてロンドンで最も多く聞かれたのは「伝統と現代の共存」である。 それも、伝統と現代の両極端が別々に存在していることへの関心に加え、長く続いてきた日本の伝統的な文化が現代の文化にどのようにつながっているかに関心を持つ人が多いのだ。 そういった関心のまなざしは、ロンドンに多数ある美術館やギャラリーでの展示にも表れている。たとえば2024年、ロンドンのサマセット・ハウスにて日本の「カワイイ文化」が大きく取り上げられた「Cute」展が開催された。 「Cute」展では、1914年に大正ロマンを代表する詩人画家である竹久夢二が自ら手がけた小物を販売する港屋絵草紙店を開店したことが紹介されていた。そこから、昭和の少女漫画やハローキティへと「カワイイ」は展開していく。 竹久夢二とハローキティをそれぞれ「カワイイ」ものとして見たことはあっても、こうして一つの文脈に置いて眺めたことがなかった私には、これらが日本的な「カワイイ」ものとして紹介されていたのが新鮮だった。 この展示内で「“Cute(カワイイ)”はPlayful(遊び心に満ちたもの)である」との表現がされていたのも印象的だ。彼らの目に映る日本の「カワイイ」カルチャーは、ジャポニスムの時代の浮世絵に通ずる「遊び心」を感じさせるのだろう。 また、2023年にイースト・ロンドンの博物館ヤング V&Aがリニューアルオープンした際にも、こけら落としの企画展として日本文化が大々的にフィーチャーされた「Japan -Myths to Manga-(日本──神話から漫画へ)」が開催された。 日本文化への関心の高さが感じられると同時に面白かったのは、やはり伝統的な表象と現代のカルチャーがどのように地続きになっているかが紹介されていた点である。 七夕伝説に関連する絵画や工芸品と合わせて、七夕の衣装を着たリトルツインスターズ キキ&ララが並んでいるのは、日本ではあまり見られない光景ではないだろうか。 このように、私たちが普段ことさらに意識していなくとも、英国の人が日本文化を見た時に感じる「日本らしさ」は私たちのなかに深く根ざしている。 過去から現在へ連綿とつながる何かを見出した時に、彼らは面白さを感じているようだ。