片脚の選手が強烈シュート 「アンプティサッカー」九州が2年ぶり日本一
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片脚や片腕を切断、もしくは先天的に失った人たちが、つえを使って戦う「日本アンプティサッカー選手権」が22、23の両日、川崎市の富士通スタジアム川崎であった。FC九州バイラオールが2年ぶり2度目の日本一に輝いた。 【動画】アンプティサッカー5年(上)“片脚のサッカー”ゼロからの日本代表誕生
「東西の横綱」同士で決勝
競技は、片脚のない人がつえを使いフィールドプレーヤー6人に、片腕のない人がGKを務める7人制。交代自由で25分ハーフで戦う。大会は日本アンプティサッカー協会が主催し今年で5回目。今大会は北海道から九州までの全国6チーム、約70選手が参加し、3チームずつでの予選リーグ、各組2位までの4チームでの決勝トーナメントや順位決定戦を実施した。 大会は、同サッカー協会最高顧問のセルジオ越後氏が、「東西の横綱」と語る2チームが勝ち上がる展開に。東の横綱は、日本代表のエース、エンヒッキを擁する前回大会の王者、FCアウボラーダ川崎。初戦の関西セッチエストレーラス戦こそ苦しんだが、エンヒッキの個人技に頼らないパス回しや得点なども絡め、チーム力を発揮して予選リーグを全勝、準決勝を順当に突破した。 対する西の横綱は、フィールドプレーヤーに代表の主力4人がそろうFC九州バイラオール。エンヒッキと並ぶ日本のエース格、萱島をトップに置く攻撃的布陣で、予選リーグ2試合で15得点。守備陣も昨年までに比べ、技術や戦術理解での成長を見せた。さらに今大会から加入したGK東が、好セーブやバックパス処理での安定感をチームに加え、関西とのし烈な準決勝を1-0で逃げ切るなど、3試合を無失点で勝ち上がった。
宣言通りの千金ミドル弾
決勝カードは3年連続、互いに知り尽くした相手。九州は前回の敗戦で反撃が遅かったと反省し、決勝までと同様、萱島をトップに置いて先制点を狙う。対する川崎は、「萱島にはDFが飛び込まずに時間を稼ぐ。彼以外も含め、抜きん出ている攻撃力を警戒し、先に点をやらない」(半澤監督)。エンヒッキがDFの前に立ち、攻守のバランスを取った形で臨んだ。 試合は一進一退。代表勢のパスワーク、セットプレーでゴール前を脅かす九州に対し、川崎もサイド攻撃やカウンターで反撃。九州は星川の直接FKがバーを叩き、川崎はエンヒッキがゴール前に抜け出してGKと1対1になるなど、両チームがチャンスをつくったが、前半は無得点に。 後半、試合を動かしたのは九州。CKのこぼれ球をつないだパスを受けた星川が、右隅に強烈なミドルを突き刺した。大会初日を終え「今回はどのチームも、横パスを受けてのダイレクトシュ―トが効いている。アンプティはドリブルシュートが難しい分、体の向きや、つえの開きを準備して受ける形が使える」と語っていた星川。「待っていたパスが正確だった」と宣言通りの一撃だった。 1点を追う川崎は猛反撃。セットプレーやゴール前へのクロスで形をつくり、バーをたたいたり、ゴールラインに迫ったりする場面もあったが、GK東が足でのセービング、浮き玉への好反応でチームを救う。守備陣の体を張ったプレーや、ぎりぎりのクリア、エンヒッキへのしつこいマンマークも光った。一方の川崎GK長野も、カウンターからの萱島のジャンピングボレーをビッグセーブ。両チーム最後まで集中を切らさずにタイムアップ。九州が1-0で激闘を制した。