「ファンを信じる」新型デミオ1.5ディーゼルの戦略 ハイブリッドの牙城に挑む
ドライバー中心のパッケージ
スタイリングに関しては写真を見ていただくのが一番早い。かつてのマツダに見られた「おぼこい」印象は消え、垢抜けたデザインになった。しかしながらそれが煩悩まみれのチャラチャラしたものになっていないのは真面目なマツダらしい。インテリアもBセグメントと言われて頭をよぎる安っぽさは無く、品質感は高い。上級クラスから乗り換えても悲しい気分にはならない。 走りに関しては試乗印象とともに後述することにして「ロングドライブ」について先に説明したい。というのも新型デミオにとって一番重要なのはこの部分で、かつデミオのコンセプトが一番解りやすいからだ。 近年の国内自動車市場のトレンドのひとつはダウンサイズだ。「大きいクルマはいらない」という人が増えている。その結果、いまやDセグメントやCセグメントからBセグメントへサイズダウンするユーザーは多い。軽自動車が爆発的に売れているのもこのトレンドの延長にある流れだろう。となると、よりスペースに余裕があり、コストのかかったクルマからデミオに乗り換える人が多くなるわけだ。マツダとしてはこの層に「ああ、やっぱり小さいクルマは安っぽいし、安心感がないんだな」とがっかりさせないことを強く意識している。それを具体化したキーワードが「ロングドライブ」だ。 第一に狭苦しさをどう払拭するかだ。新型デミオはクルマを大きくした。新旧で対比すると、全長3900→4060ミリ、全幅1695→1695ミリ、全高1475→1500ミリ、ホイールベース2490→2570ミリというディメンションを見ると目立つのは全長とホイールベースの拡大だ。 デミオは全長を延伸したのと同時にフロントホイールを前に押し出した。これはドライブポジションの適正化を狙ったものだ。右ハンドルマーケットでは、右前輪のホイールハウスとアクセルペダルが干渉して、結果ペダルが左にオフセットして運転姿勢が辛くなる。 右ハンドルを基本に設計される国産車でもそうなっているクルマは少なくない。オフセットを放置したくなければ、大きくわけて2つの方法があり、ひとつは運転席ごとねじって左斜めに向ける方法。もうひとつは運転席をペダルごと後ろに下げる方法だ。 前者では運転姿勢に違和感が残り、ロングドライブでの疲労が大きくなる。後者はクルマのパッケージ効率が落ちて、リアスペースが削られる。こうした問題を避けるために、タイヤの方に動いてもらったのがデミオの解決策だ。結果としてペダルとシートの関係は良好なものになる。しかしタイヤを前に押し出すためにはエンジンとトランスミッションを新設計する必要がある。簡単な解決方法ではないのだ。