なぜ森保監督はアジア杯メンバーから香川真司を外したのか?
今シーズンから指揮を執るスイス人のリュシアン・ファーヴル監督の構想から、香川は完全に外れている。しかもドルトムントは、現時点で2位のボルシア・メンヘングラードバッハに勝ち点7ポイント差をつけてブンデスリーガの1位を快走。チーム内の序列を逆転させる作業は容易ではなく、先月下旬には一部スポーツ紙上にスペインへの移籍希望を激白する、香川の独占インタビューが掲載された。 現状を考えれば、環境を変えるのならば今冬がベストにして最後のタイミングとなる。しかし、1月9日にトルクメニスタン代表とのグループリーグ初戦に臨み、決勝が2月1日に行われるアジアカップを戦えば、たとえ移籍できたとしても、新天地に順応できる時間をほとんど得られないままリーグ戦に臨まなければならない。 同じ図式はフランス1部リーグのトゥールーズからオファーが届き、アントラーズ側も今冬の移籍を容認したと報じられた昌子にもあてはまる。目前に迫ったアジアカップ制覇ももちろん大事だが、さらに長い目で見た場合、日本代表のレベルアップに寄与するはずの選手たちのターニングポイントになる時期だからこそ、森保監督はあえて招集しなかったのではないだろうか。 A代表監督就任後では初めてとなったヨーロッパ視察では、ベルギーでMF遠藤航、DF冨安健洋、FW鎌田大地(シントトロイデンVV)、ドイツでFW大迫勇也(ベルダー・ブレーメン)、浅野とMF原口元気(ハノーファー96)、FW宇佐美貴史(フォルトゥナ・デュッセルドルフ)、そして香川らと会った。 アジアカップへ招集した遠藤や冨安、原口、大迫は所属チームでのプレーぶりを、復帰を検討していた浅野はコンディションをチェック。そして、宇佐美やリーグ戦で10ゴールをあげている22歳の鎌田には、香川と同じく「貴重な戦力として考えている」と伝えた。日程の関係で足を運べなかったスペインの乾に対しても、同じ思いを抱いているはずだ。 森保監督は4勝1分けと無敗で乗り切った年内の国際親善試合で、ロシア大会の主力組を一度は招集する青写真を描いていた。9月こそゼロだったが、10月シリーズには満を持して長友や吉田、原口、大迫、DF酒井宏樹(オリンピック・マルセイユ)、そしてMF柴崎岳(ヘタフェ)を復帰させた。このときは香川と昌子が故障で戦列を離れ、乾と川島は新天地で出場機会を得ていなかった。 「今回選んだ選手だけが日本代表とは思っていない。アジアカップでいい戦いをして、目標としているタイトルを取ることが経験の浅い選手たちにとって自信に、そして今回招集できなかった選手たちの刺激にもなって、日本サッカー全体のレベルアップにつながっていくと思っている」 来年9月からは、次回カタール大会出場をかけたワールドカップ・アジア予選も始まる。アジア王者奪回とカタールの地での躍進。まずは前者により比重をかけて継続的な強化を図り、同時進行で後者をも長期的な視野に入れながら、森保ジャパンは今月26日から千葉県内で直前合宿をスタートさせる。 (文責・藤江直人/スポーツライター)