ハスクバーナ「ヴィットピレン401」 2024年型は400ccシングルロードスポーツの資質に感心!!
もっとも、だからと言って新型が気軽で自然なだけのバイクかと言うと、そんなことはありません。スポーツライディングの楽しさという点でも、従来型を凌駕する資質を獲得しているのです。 中でも私が感心したのは、峠道での軽快な走りです。と言っても、従来型も峠道は楽しかったのですが、新型は前後輪から伝わる接地感が濃密に、右手の操作に対するエンジンの反応が従順になっているうえに、コーナリングABSやトラクションコントロールが程よい塩梅で乗り手をサポートしてくれるので、シングルエンジン車ならではのヒラヒラ感が思いっ切り堪能できるのです。 そのあたりを意識しながらの走行中、私の脳裏に浮かんだのは、1985年から十数年に渡って販売されたヤマハ「SRX-4」と、1991年に登場したスズキ「グース350」でした。 従来型では意識しなかったのですが、よくよく考えると「ヴィットピレン401」は、スクランブラーやスーパーモタードの資質や、レトロテイストを感じない、昨今では貴重な400ccシングルロードスポーツなのです。
もちろん、このバイクの動力性能はかつてのシングルロードスポーツを完全に上回っていて、最高出力・装備重量に注目すると、「SRX-4」の33ps・167kg(初期型)、「グース350」の33ps・160kgに対して、新型「ヴィットピレン401」は45ps・164.25kgです。とはいえ、400cc単気筒ならではのヒラヒラ感や力強さが味わえるという点で、「ヴィットピレン401」は往年のシングルロードスポーツの路線を継承しているように思えました。 ちなみに、現在の日本で市販されている他の400cc単気筒車と比較してみると、兄弟車の「スヴァルトピレン401」は峠道での運動性という面でわずかに劣りますし、KTM「390デューク」はスーパーモタードテイストが濃厚です。 また、トライアンフ「スピード400」はシングルならではの魅力を171kgの車重がちょっと阻害している感がありますし、ネオクラシック路線のベネリ「インペリアーレ400」は狙いが異なります。 いずれにしても、懐かしくて新しい、400ccシングルロードスポーツの魅力が堪能できる新型「ヴィットピレン401」は、現代では貴重な存在と言って良いのではないでしょうか。
中村友彦