読売新聞

　日本酒や焼酎をはじめとする酒造りの業界が、人口減少やニーズの多様性といった変化にさらされている。国内市場では、豊かな香りが特徴の「フレーバー系」と呼ばれる商品をはじめ、将来の市場を支える若者の需要を掘り起こす動きが目立っている。 【イラスト地図】九州・山口の酒は世界に羽ばたいている

　薩摩酒造（鹿児島県枕崎市）が7月に全国で発売した芋焼酎の新商品「彩響」は、日本酒の仕込みで使用される清酒酵母を使い、青リンゴのような清涼感のある味わいに仕上げた。「新感覚の焼酎」と位置づけ、焼酎に苦手意識がある消費者の取り込みを狙う。

　「麦焼酎発祥の地」とされる長崎県壱岐市に蔵を構える壱岐の蔵酒造は、麦焼酎をベースにしたスパークリングカクテルを昨年7月に発売。アルコール度数を通常の焼酎より低い3～7％に抑え、「焼酎を飲んだことがない人にも受け入れられることを目指した」（担当者）という。麦焼酎「いいちこ」で知られる三和酒類（大分県宇佐市）も、大分特産のかぼすを使った焼酎ハイボールを販売する。

　厚生労働省の2019年の国民健康・栄養調査によると、1週間に酒を「ほとんど飲まない」と回答した割合は20～29歳で26・5％と、全体（15・9％）を大きく上回った。男女でも割合に大きな差はなかった。

　地場の酒造業界を支えるため、自治体も対応に乗り出している。大分県と同県酒造組合は22年と23年、若者に地元の日本酒や焼酎を知ってもらうためのイベントを大分市内で実施し、「インスタ映え」するカクテルやサワーなどを販売した。今年も開催を計画中という。鹿児島県は今年度、焼酎の価値を高めて差別化に挑む事業者を対象とした補助制度を新設し、生産を後押ししている。