「年収の壁はゼロにすべき。意欲を削ぐ施策は適切なものでない」年収103万円、106万円、130万円、201万円の違いは?【年収の壁をわかりやすく解説】
いよぎん地域経済研究センターの菅正也主席研究員は「企業の多くが支援強化パッケージでは抜本的な解決にならないと考えている」とした一方で、パート労働者の就業調整が一部でも解消した場合の効果は、人口減少による市場縮小が進む県内経済にとって小さくないし、将来の労働力不足の観点からも有効な対策の1つとなり得る可能性があると、一定の評価をしています。 ■▼財源は?基礎控除アップは178万円ではなく113万円が適切ではないか 一方、国民民主党の経済政策について、財源の問題に警鐘を鳴らす意見もあります。 野村総合研究所のエグゼクティブ・エコノミスト・木内登英氏は、国民民主党は恒久減税を主張する一方で、政府の試算では約7.6兆円もの巨額の減収になることから、恒久化は不可能ではないか、としています。 ただ、木内氏は減収幅を抑える案を示していて、103万円の壁対策を低所得層に限定した減税にすれば、政府の試算による7.6兆円程度の大幅税収減を年間1030億円程度に抑えることができるとも試算しています。 この木内氏による試算は、所得税の基礎控除などを103万円から178万円まで引き上げる一方で、それ以上の年収の人には従来通りに103万円の基礎控除などを適用するとした場合、税収の減少規模は年間1030億円程度にとどまるとのことです。 そもそも、国民民主党が提案する178万円までの基礎控除等の引き上げは、過去30年間の最低賃金の上昇率である1.73倍に基づくものです。 これについても、木内氏は、基礎控除が「最低限の生活を保障する狙いで導入されている」とすれば、基礎控除の引き上げ幅は、消費者物価上昇率の約10%、つまり113万円とするのが適切とも述べています。 荒い概算であるとの前置きがあるものの、木内氏の試算によれば、すべての人の基礎控除を引き上げたとしても、税収の減少額は1.1兆円以下に抑えられるのではないか、としています。