クラシック音楽の楽しみ方は案外シンプル?崔文洙×堀井美香による対談インタビュー
コンサートマスターに必要な「人間力」
─あれだけ人数がいるオーケストラの方たちをまとめ上げるのはかなり大変なのではないでしょうか? 崔:どうしてもうまくいかないときはある程度力技になることもあって、自身で身につけてきたいろんな引き出しを使いながらまとめていきます。もちろん楽器はうまくなければいけないですが、(オーケストラは)人と人との関わりなので、人間力も磨かないといけません。 堀井:曲の解釈のしかたが違うと音の出し方も微妙に違うんですよね。コンサートマスターはそれを揃える役目ですが、全部の個性を殺してもいけなかったりするんですか? 崔:最初のリハーサルのときは自分たちで考えてきたように音を出すこともあるのですが、リハーサルを進めるなかで指揮者の方向性も踏まえて、最終的には1つのまとまった方向性を持った音色をつくります。 ─交響楽団を扱った映画やドラマでは、指揮者と演奏家たちがぶつかるシーンもありますが、実際はどうなのでしょうか? 崔:昔はそういう指揮者も結構いらっしゃいましたけども、このご時世ではハラスメントになってしまうので、コミュニケーションは変化しつつあります。自分が指揮者としてやりたいこと、準備してきたことを楽員にぶつけられないようになるとちょっと違うかもしれませんが、やり方を変えて結果的に同じ効果を出すことができるのであれば、怒鳴る必要はないのかなと思います。難しいですね。 堀井:指揮者の方で、台に立った時点で何か持っている雰囲気が違うということもありますか? 崔:ありますね。まだあまり共演してない方で「どんな指揮するんだっけ」と思っていても、振り出してしばらくすると音が急に「集まってくる」というか。真ん中の大きな柱に向かって音が集まるような感覚で、僕らはよくそういうふうに表現するんですけど、そういう指揮者は良い指揮者ですね。オーラがあるというか、それこそ人間力が滲み出てくるんじゃないでしょうか。