「身内に遺すよりも」高齢女性に広がる“遺贈寄付”が10年で倍増、年間400億円の現状
若い人も考えるように
高齢者ばかりでなく、最近では40~50代も遺贈寄付を考えている人が増えたそう。 「ずっと働いている独身女性でよくあるのが、自分で購入したマンション住まいで貯蓄も1千万~2千万円程度ある、というケース。こういった方が何らかのきっかけで遺贈寄付を知り、セミナーに参加される姿はよく見かけます」 いわゆる“おひとりさま”の増加で若い人も考えるように。 「遺言を書く年代は70代が5割、60代と80代がそれぞれ2割という感じで、60~80代が大半を占めるのですが、おひとりさまの場合、50代くらいの早い段階で、自分亡き後の財産の行方を気にかけられています。 “突然倒れたり事故に遭ったりしたらどうしよう”といった1人で生きていくうえでの不安があり、その備えとして終活に取り組む中で、遺贈寄付にたどり着かれているのではないでしょうか」 では子どもがいる人は遺贈寄付をしないのか、というとそんなことはない。 「遺産が何億円にも上る、いわゆるお金持ち。お子さんたちには数千万円程度を渡して、残りは全額寄付という形など、富裕層によく見られます。基本的にはお子さんに遺産相続しつつ、お子さんと相談して寄付額や寄付先を決められたりもしています」 親子でコミュニケーションをとりながら遺贈寄付することで、親の価値観や気にかけていた社会問題が、子どもに伝わる。それは子どもにとって目に見えない遺産となるのかもしれない。一方では遺産をまったく子どもや孫に相続させないというケースも。 「遺産の相続争いを防ぐために、全額寄付というケースもあります。事前に子どもに相談すると、遺贈寄付に対して子どもが反対することは案外少ない。 私が関わった方で、先日、“私の祖父は遺産を1円も子どもに渡さず全額寄付した”という人がいました。孫であるその人は“カッコいい、おじいちゃんらしいな”とその遺志に共感したらしいです」