【会見全文書き起こし・後編】翁長知事「基地は沖縄経済の最大の阻害要因」
吉田:ジャパンタイムズの記者の吉田と申します。日本語で失礼します。2点あります。私も普天間の返還問題をほとんど20年近く見てきていますけれども、ここ4~5年だと思うんですが、この基地問題に絡んで、沖縄の県民は日本の本土に差別されてると。人種とは言いませんけれども、差別だという、これは明確な違いだと思うんですけれども、知事自身も以前のその基地に対する態度を変えられたということも含めて、沖縄の県民の感情を、あるいは本土に対する感情を決定的に変えた、何が一番重要なファクターだったのかと。差別という意識問題も含めて教えていただきたいのが1つと。 それから、沖縄の経済に対する非常に楽観的な見方が出てきて、これもここ数年間、非常に新しい動きだと私は思うんですけれども、ただ、その北谷町の、例えばアメリカンビレッジは非常に成功例ですが、98年にオープンして以降、沖縄全体の小売の売り上げは伸びてないと思うんですね。つまり沖縄の中の経済の中だけでゼロサムゲームになっていて、必ずしも沖縄県の全体は伸びていないと。その基地返還の、その巡る議論は非常に最近の動きは喜ばしいことだと思うんですけれども、沖縄県内のゼロサムゲームになる恐れがあるという見方があると思うんですけれども、この辺についてはどのような見方をご覧になってますでしょうか。
翁長:この20年来の基地問題で、差別とか、そういう言葉がよく使われるということがありました。おそらくその原点は、8年ほど前の教科書検定だと思いますね。ですから、私が先ほど戦争のことについては触れませんと申し上げましたけれども、あのときの沖縄が日本国民になるんだと、立派な日本国民になるんだということで、日本軍と一緒に戦いました。戦いましたけれども、現実に、現場では地上戦ですから、お墓に逃げた沖縄の人をお墓から出して、日本軍が隠れる。あるいはまた、足手まといだから手榴弾をあげて、自決を迫る。こういったようなことを私たちはおじいちゃん、おばあちゃんから聞かされてきたんです。しかし実際は、そういった教科書検定に書かれていたものを、それを消そうとしましたので、消そうとするときに、あの教科書検定というのは仕組みからいっても、何からいっても大変難しいものでありますけれども、沖縄の人が10万人集まってそれはできないと。うちはおじいちゃん、おばあちゃんからみんな話は聞いてる。そういう聞いてる中で、こういうものがなかったことにするということはいけないよと。こういうようなことで、保守も革新も関係なく、あのときの集まりがありました。 そして抗議をして一定程度、それは是正はされましたけれども、それでもあのときのやっぱり沖縄があれだけ操を尽くして、日本のために尽くしても、こういう形で歴史の教科書を変えるのかというようなことになりますと、沖縄からすると立つ瀬がない。私たちは何を誇りにして、何を基盤にして、これから子や孫にしっかりと自分の足でこの沖縄のふるさとに、地に立って、アジアに飛躍しなさい、世界に飛躍しなさい、日本国で頑張りなさいって言って、こういうことが言えなくなります。ですから、それから以降、なんかおかしいなというのは、沖縄の人権の目覚めと同時に世界の動きも同時に、アジアの経済的な成長も同時に、そういうものが絡みあってきて、私たち自身がある意味で、自分の足で歩きたい、これが自己決定権ということがよく言われますけれども、独立とは違いますけれども、地方自治のあり方とか、そういったものをもう1回考え直さなきゃいかんということがあって、いわゆるそういったことになったと思います。で、そういうことがあっても、基地の問題に関しては、ある意味で言葉ですね、使いたくないですけれども、「粛々と」沖縄県に置いていくというようなことがあるわけですから、私たちからすると、これはいかがなものかというふうに思っております。