ひろゆき、中野信子と脳を科学する④ メンサ会員、お笑い芸人、おバカタレント......「頭がいい」とはどういうこと?【この件について】
ひろ んで、頭が悪い人には「救いようがない世の中」になっている気がするんですよ。 中野 というと? ひろ 最近、お笑い芸人の高学歴化が目立つじゃないですか。例えば、昨年の『M-1グランプリ』で優勝した令和ロマンのおふたりは慶應義塾大学出身です。優秀な人がお笑いに頭を使うとやはり面白いものが作れる。つまり、「優秀な人は何をやっても優秀」というありきたりな結論に至ってしまう気がします。 中野 そのとおりだと思います。 ひろ かつては、勉強ができない人の進む道として「おまえは吉本に行ってお笑い芸人になれ」みたいな風潮があったと思うんですよ。ところが、今や吉本興業が主催するM-1グランプリも慶應義塾大学出身者が優勝してしまう。 中野 確かにそうなってきていますね。 ひろ スポーツの世界でもそうなりつつあるじゃないですか。去年の夏の甲子園大会も慶應義塾高校が勝ちましたよね。スポーツも「こういうトレーニングをしたら、ここに筋肉がつく」「こう投げたほうがボールのコントロールが良くなる」という具合に、結局は学習能力の高い人がうまくなりやすくなっている。 中野 そうですね。 ひろ 多くの人が自分の能力を発揮できる場所があればいいのに、結局、頭のいい人が全部持っていってしまっている。しかも、そういう人たちって時間的な余裕もあるじゃないですか。例えば、家でおばあちゃんの世話をしているようなヤングケアラーは、スポーツをする暇なんてないわけです。 中野 スポーツに限らず、音楽の世界でも同じような現象が起きています。アーティストの中に高学歴の人がすごく増えてきた印象があります。結局、子供の頃から家に楽器があるような環境は、裕福な家庭が多いですから「お金持ちだから音楽ができるんだよね」という話になってしまうんです。 ひろ 昔は「成績はイマイチだったけど、音楽だけはすごい!」みたいな人がチャンスをつかめたはずなのに、そういった領域にまで学歴や経済力の影響が及んできて、もう逃げ場がない状況になっている。結果として、そういった人たちは低収入で結婚できないという新たな自然淘汰がこの時代に始まっているのかもしれません。 中野 私たちが子供だった頃と比べても、格差は覆しにくくなっていると思います。 ひろ お笑いもスポーツも音楽もそれを証明してしまった。そうなると、学習能力が低くてもやる気だけはある人が状況を覆したり、夢を見られるのって、もしかしたら朝倉未来さんがやってる格闘技大会の「ブレイキングダウン」くらいしかないと思うんですよ。 中野 なるほど(笑)。本当はもっと多様な選択肢があったほうが健全なんですけどね。 *** ■西村博之(Hiroyuki NISHIMURA) 元『2ちゃんねる』管理人。近著に『生か、死か、お金か』(共著、集英社インターナショナル)など ■中野信子(Nobuko NAKANO) 1975年生まれ。東京都出身。脳科学者、医学博士、認知科学者。東京大学大学院博士課程修了。フランス国立研究所ニューロスピンに勤務後、帰国。主な著書に『人は、なぜ他人を許せないのか』(アスコム)など 構成/加藤純平(ミドルマン) 撮影/村上庄吾