<劇場版モノノ怪 唐傘>花澤香菜×中村健治監督対談 初めて語る役作り、アフレコの裏側 “大奥”に込めた思いとは?
中村監督 花澤さんを含めて、皆さん演じる以外の事前準備がすごかったですね~!
花澤さん PDFでは伝えきれなかった設定を中村監督から直接解説していただく時間もあって、それだけのものを事前に用意してくださるのはありがたいですし、この作品に対する中村監督の熱量を感じました。熱量を伝えてくださることでこちらのテンションも上がりますし、下手なものは出せないぞ!という覚悟にもつながる。頑張らねば!という気持ちでアフレコに臨んだのを覚えています。
◇「北川役は花澤さんでしかありえない」 “揺らぎ”“孤独”を表現
--今回の舞台である「大奥」に込めた思いとは?
中村監督 この物語の大奥とは、地球、国、社会、学校、家族……。それら集団すべてを暗喩しています。大奥ということで女性特有の物語は当然入れてはありますが、普遍的な人間ドラマを展開させたつもりです。女中の多くに顔がないのも「個を失くしたモブ」と「組織に染まる」という二つの意味を込めています。
花澤さん 北川さんが手を放した途端に、同期の女中の顔がグルグルに変わる場面は見ていて心にグサッと刺さりました。同じ組織に属していたのに、捨てた途端に自分とは無関係の人になってしまうのかと……。その冷酷さは怖いです。「組織の中で孤独に生きること」を物語のテーマにしている点も今日的だと思いました。組織に組み込まれている以上、その集団も大事にしなければいけない。でも自分の理想や願望はどこに置いておけばいいのか? その葛藤は学生でも社会人でも抱えることがあると思います。北川さんの言葉というのはアサちゃんに伝えたい言葉でありながら、実は自分自身に向かっているような言葉でもあり、しかも北川さんは実態としてその場にいるようでいてぼんやりとした思念でもあるようで、北川さんの声が届いているのか届いていないのか分からない。その揺らぎのようなものを表すことに苦労しました。