今や「美容医療=韓国」じゃない!? 世界的トレンド【医療×観光】 業界のプロが見た日本の「医療ツーリズム」最前線
患者が医療サービスを受ける目的で、自国より医療水準が優れている国へ渡航し、治療や健診を受けることを指す「医療ツーリズム」。日本においても、高水準の医療サービスを求めて海外から多くの人が訪れるなど、インバウンドの形態の一つとして、世界的に注目を集めています。 【画像】採血後に「青あざ」できたことある?→これが「実際の写真」です(閲覧注意) なぜ今、日本の医療を求めて来日する外国人が増えているのか――。「湘南美容クリニック」をはじめとする医療機関への経営支援事業を展開するSBCメディカルグループホールディングス CEOの相川佳之さんは、その背景として「信頼性の高い医療技術×おもてなし文化」という“日本ならでは”ともいえる医療体験の存在を指摘します。医療ツーリズムの現在地を熟知した業界のプロが見据える、医療と観光がつながる時代の最前線とは――。
医療ツーリズムを「国家戦略」とする東南アジア
先日、仕事の合間に人間ドックを受けに行ったとき、待合室で思わず「え?」と驚いてしまいました。外国人の方が想像以上に多かったのです。 隣に座っていた外国人男性に思い切って話しかけてみると、3年前に膝の軟骨損傷の治療で日本を訪れた際、医師の技術とホスピタリティーに感動し、それ以来、毎年家族で健康チェックを受けに来ているとのことでした。 そう考えると、人間ドックを毎年受診する習慣って日本独特ですよね。他国でも健康診断はありますが、個人が自費で毎年精密検査を受ける文化は世界的に珍しいのです。多くの国では、病気になってから治療を受けるのが一般的。特にアメリカやヨーロッパでは、医療費や保険制度の影響で定期的な検査はなかなか浸透していません。その点、日本の人間ドックは内容の充実さや短時間での効率的な検査が魅力であり、海外の人たちにも「信頼できる医療」として受け入れられているのが納得できます。 筆者が経営支援を行っている「湘南美容クリニック」も、この数年で医療ツーリズムの需要が拡大し、年間1万人ものインバウンドをお迎えしています。このように、自国内では手が届きにくい水準の医療サービスを求めて渡航する「医療ツーリズム」が、世界的なトレンドとなっています。 それぞれの国が医療分野で持つ強みを生かし、独自のサービスを提供していることがその背景にあり、歯科治療、外科手術、美容医療、再生医療に至るまで対象は幅広く、利用者のニーズも実に多様です。近年は、観光と治療を組み合わせるスタイルもリピーターを増やしています。 健康や美しさを求める旅が、新しい体験をもたらす――。かつて「特別なこと」とされていた医療ツーリズムが、今やごく自然な選択肢の一つとなりつつあることに、驚きと感慨深さを感じずにはいられません。本当に時代は変わりましたね。 では、「医療ツーリズム」の魅力を少し掘り下げてみましょう。 何といっても注目すべきは、医療ツーリズムを国家戦略として位置づけた東南アジア各国の台頭です。医療サービスの質に加え、各国政府が医療ツーリズムを積極的に支援し、PR活動を行うことで、医療と観光の融合が進んでいます。 筆者が知る限り、シンガポールはがん治療や予防医療、インドは心臓外科や再生医療の分野で国際的評価が高まっていますが、伝統医学「アーユルヴェーダ」をかけ合わせるなど、柔軟で幅広い医療サービスを低コストで提供しています。医療とリゾートの組み合わせとして人気が高いのは、美容医療や不妊治療の分野で世界的な地位を確立したタイです。 ヨーロッパにも目を向けてみましょう。ドイツは高度な外科手術やリハビリテーション、スイスはアンチエイジングや予防医療で富裕層からの支持を集めています。そして、トルコの毛髪移植やメキシコの歯科治療など、特定の分野で特化した国々も見逃せません。個人的には、高級リゾートのような医療施設を持つスイスでの医療体験に憧れを感じます。いつか時間をつくって訪れてみたいものです。