僕が住む町の話。/文・安藤なつ
「一緒に住もう!」 と海外留学から帰ってきてすぐの地元の仲の良い同級生の友人に、半ば強引に話を持ちかけた。ちょっと昔の俺が引っ張ってくぜ系のプロポーズかのように。 【連載】僕が住む町の話。 友人が海外にいるあいだ、自分は介護のバイト、お笑いプロレスや芸能活動をしており、地元から都内に出るのに電車や車などを使うと片道1時間半から2時間。打ち合わせ、ライブ、先輩との飲み会、オーディション等でほぼ毎日都内に通っていた。 慣れているといえどその往復の時間や交通費を考えると、色々物凄く勿体ないのでは?と、うすうす気付いていたものの、独り暮らしか~できるのかな?が邪魔をしてウジウジしていた。そこに海外でバチバチに修行つんできた(独り暮らしのプロ)友人が帰国。 そこで 「一緒に住もう!」 である。 1人じゃ都内に行くの不安だけど心の許した友人とならいける!今だ!と相当自分勝手な尻の叩き方をしたのだ。 「引っ張っていくぜ!」のプロポーズだったのではなく、「1人じゃ不安なので私を守ってお願い!」だったのだ。 26歳の冬、心の広い友人と共に引っ越してきたのが高円寺。芸人、役者、ミュージシャンがたくさん住んでいると聞いてここしかない!と決めていた。 日本のインドだと風の噂で聞いていたが、インドにも行ったことないしなんのことやらと思っていたが、道に酔っぱらって寝てる人がいても 「別に普段通りですけど」 みたいな顔して通りすぎる人の顔と横たわってお酒に飲まれた人の顔みると、なるほどこれがインドっぽさかと変に納得したのでした。
引っ越し前日、明日は雪予報というニュースをみて、じゃ先延ばしかな~荷造りはゆっくりやろうだなんて思っていたら次の日カンカン照り。慌てて地元から2トントラックに荷物詰め込み(というか投げ込み)、運転して高円寺に向かった。 2人での生活はとても楽しく、引っ越してきてから暫く同じベッドで寝たりもしていた。 ある朝、何か違和感あり目を覚ましたら友人がグレープフルーツ大の雪だるまを私のほっぺにのせてゲラゲラ笑っていた。霜焼けで痒くなった顔をポリポリかきながら起き上がると 「雪だよ!大雪!」 とテンション爆上げでお知らせしてくれた。 そのまま外に出て雪合戦していると近所のおばさんがにこやかに話しかけてきてくれたりお裾分けもらったりアットホームな関係ができていった。 東京生まれではあるけど、どのつく田舎育ちなので23区は隣に誰が住んでるかもわからないようなコンクリートジャングルだと思っていたが、高円寺は全くそんなことはなく温かみのある町なんだと安心した。 初めて住んだ部屋は1階2部屋、2階2部屋のアパート。6畳8畳6畳の長方形。8畳のリビングが真ん中でお互いのプライベートも保たれたつくりだった。が、寝るとき以外リビングで毎日ずっと一緒にいて語り合っていた。 今日仕事であったこととか、朝近所のバンドマンのギターと歌で目覚めたこと、将来一緒に仕事できたらいいねとか、1階に住むモヒカン鋲ジャンのゴリゴリのお兄さんちのベランダに手を滑らせて落としたでっかいブラジャーを必死にハンガーや物干し竿をガムテープでくっつけフックにしてつり上げたこととか。