なぜメディアは今回、ビットコインにあまり関心を示さないのか
ビットコインのストーリー
私は2011年にFortune.comで初めてビットコインについて書いた。それ以来、ビットコインと暗号資産カルチャーに対する評判と世間の認識に最も魅了されてきた。 私が記事を書くきっかけとなったのは、ブログ「Gawker」が闇サイト「シルクロード」に関する素晴らしい暴露記事(『考え得るどんなドラッグも買える秘密のウェブサイト』という衝撃的な見出しだった)を掲載したことだ。 その中で、シルクロードで使われる通貨はビットコインであり、ビットコインは「追跡不可能とされている」と説明されていた(正確ではないが、当時はこのテクノロジーを正確に説明することは必ずしも容易ではなかった)。 このGawkerの記事を受けて、民主党のチャック・シューマー上院議員(ニューヨーク州)とジョー・マンチン上院議員(ウェールズ州)はエリック・ホルダー司法長官に書簡を送り、シルクロードとビットコインの取り締まりを要求し、ビットコインを「マネーロンダリングの一形態」と呼んだ。 当時、暗号資産を扱うジャーナリストはそれほど多くなかった。この小さく奇妙な世界にいる我々は皆、多くの市場サイクルとそれに付随するストーリーを見てきたが、15年経った今もあまり変わっていないように思える。 ビットコインの最初の強気相場は2013年で、初めて1000ドルを超えたが、その後、初マウント・ゴックス(Mt. Gox)の破綻で暴落した。だが、2017年の大暴騰でその年の感謝祭の食卓で話題になり、多くの人たちに本当に浸透するまで、ビットコインはまだ比較的無名の存在だった。伝統的メディアは、ICO(イニシャル・コイン・オファリング)ブーム(フロイド・メイウェザー氏、キム・カーダシアン氏など、トークン・セールを売り込んだ多くのセレブたち)にあと押しされ、普通の人たちの関心を集めていたこの不透明なフィンテックの話題をカバーするために、専任レポーターを置いた。そして相場はまた暴落した。 2021年、新型コロナウイルスのパンデミックに端を発した相場上昇がやってきた。個人投資家の参入、NFT、ミームコインなどがと表裏一体となり、暗号資産マニアが定着した。投資は、オンラインにおける、誰もが知るソーシャル・アクティビティになった。そしてまた暴落。ビットコインが7万2000ドルの史上最高値を更新した現在の強気相場は、ブラックロックやフィデリティといった金融大手がビットコインETFを実現させたことによるものだ。もちろん、単一の事柄が原動力となることはなく、現在の上昇もETFだけによるものではないが、最も記憶に残りやすいものであり、そのように記憶されるだろう。 こうした変遷のなか、起業家たちは信頼できる企業や、精緻なツールやサービスを開発し、好況なテック・カテゴリーの屋台骨を作り上げてきた。 しかし、一般的な人たちの間では、15年間ほとんど変わることなく、以下のようなストーリーが語られてきた。 ビットコインはネズミ講か、なんとなく詐欺的で、主にハッカーや詐欺師が使うツールだ、と。あるいは、電力を大量に消費することで環境を破壊している、と。よく言っても、不真面目。人々に不快感を与える。FTXが台頭し、衰退する以前から、暗号資産は人々を苛立たせてきた。 スーパーボウルの広告を覚えているだろうか? マット・デイモン氏が「幸運は勇者に味方する」と言っていた広告を? 「HODL」と書かれたシャツを着てランボルギーニを乗り回す奴らを? ジミー・ファロン氏とパリス・ヒルトン氏がゴールデンタイムのテレビで「Bored Ape」の切り抜きを掲げていたことを? FTXは、バンクマン-フリード氏とスーパーモデルのジゼル・ブンチェン氏の巨大な広告、野球の審判全員のシャツに貼られたFTXのワッペン、レースカーやNBAのアリーナに掲げられたFTXのロゴなど、そのマーケティングを新たなレベルに引き上げた。 FTXは非常に積極的なマーケティングを行い、人々の意識にその存在を浸透させた。そして、破綻した。これは暗号資産業界で起きた最大のニュースであり、革命的なテクノロジー、新しい決済手段というイメージに極めて悪影響を及ぼした。 そして、史上最高値を更新するまで、わずか15カ月しかかからなかった。 メインストリームメディア、特にテレビニュースは、価格が急騰している時か、暴落している時しか取り上げない。それは2017年の暴騰の時からそうだったし、いくつかの例外を除いて現在もそうだ。 そして今、新たな強気相場の真っ只中だが、テレビニュースの関心はかつてないほど低いようだ。イーロン・マスク氏が人気テレビ番組でドージコイン(DOGE)をアピールした時よりも、大手金融機関が決定的なパワーとなっている。 確かに、BONKやドッグウィフハット(WIF)、Jeo Bodenといったミームコインも盛り上がっているが、2024年の強気相場では、騒がしいカーニバルの客引きの声は聞こえてこない。 おそらくこれはポジティブな兆候だろう。おそらく、暗号資産は以前のような奇妙な存在ではなくなっている。暗号資産はようやく、成長しつつあるのかもしれない。 |翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸|画像:サム・バンクマン-フリード氏(CoinDesk)|原文:Why the Media Is Seemingly Less Interested in Bitcoin Than Ever
CoinDesk Japan 編集部