中野信子×デーブ・スペクター 日本のサラリーマンは今後どうなる?将来訪れる「断絶の時代」を受け入れられるかが勝負になる
◆断絶の時代 デーブ なくなってきた。前は脱サラっていう言葉があったんですよ、脱サラリーマン。知人が何人かアメリカに住んでて、どうしたんですかって聞くと「いや、会社いたけども脱サラして辞めちゃって」って。 中野 今は聞かないですよね。転職するか、FIREするか。 デーブ 今会社辞めるの恥ずかしくないですもん。前は定年前に会社辞めただけでご近所から「ちょっと、あの方、どうされたのかしら」。ひそひそ。 中野 いろいろ変わっている時期ですよね。かといって日本的な終身雇用も、今さら元に戻れるか。 デーブ 多分無理でしょうね。 中野 企業の体力がもうそんなにないし、終身雇用があると何が一番困っちゃうかというと、人口ピラミッドが下に向かって細っていくので、維持するためには若い人は馬車馬のように働かないとダメですよね。 でもそんな働き方できないので3年どころか3日で離職しますよね。企業体が成立しなくなるので元に戻りようがない。じゃあ日本人としての共通の認知基盤というのが、何によって保持されるかというともう同じ言語を使ってるというぐらいしかなくなるかもしれないですよね。 デーブ 日本語ね。 中野 すでにその共通基盤も違ってきちゃってるから、人によって言葉の受け取り方もさまざまになってますし、断絶の時代というのが来るんだろうなとは思います。 そういう意味では、その断絶の時代を面白いと思えるか、自分と違うものをいいと思えるかというのが勝負なのかなと。 相手が自分と違った時に喧嘩しちゃう人と、違うということを使って儲けましょう、得しましょうという人と、その勝負になってくるんじゃないですかね。
◆少子化のままでいいのか デーブ 中野さんが言ってたみたいに、こうやって日本社会が変化を余儀なくされていくのも、少子化が大きいと思うんですよ。僕は日本のよさをよく知ってるし、残して欲しいと思うけど、維持するには労働力も足りてない。 中野 何を残して欲しいんですか。 デーブ アンナミラーズかな。 中野 アンナミラーズもうないですよ。 デーブ 甘栗の屋台とか新幹線のワゴン販売とか……いやそれはいいんですけど、日本てリダンダンシー、何だっけ。 中野 冗長性? デーブ そう、冗長というか重複するっていうか余ってたじゃないですか人が。日本は。例えば本屋さんって、紀伊國屋とか行くと、2人で接客してくれた。2人必要ないでしょと思うけど、あれ最高ですよ。外国人には不思議に見えるんだけど、2人でレジとカバー掛けやってくれた。 中野 元々日本の本って表紙があるのにカバーがついてて、帯がついてて、その上に書店でブックカバーつけてくれるのは確かに不思議ですよね。洋書ってカバーついてないのも多いですもんね。 デーブ あの流れ作業、最高ですよね。見事。 中野 ですよね。 デーブ でもそういうのができなくなるね。人少なすぎて。 中野 コンビニもセルフレジ増えましたしね。あれも人手不足対策ですって。求人しても来ない。教育コストもかかる。だからどんどんワンオペでできるようにって導入されて、時期がコロナに重なってたけど、実は客の利便性云々よりオペレーションの問題だそうです。