「ブレない心」はどうしたら持てる?愛する人のそばにいるよりも、自分らしい生き方を選ぶ女性は平安時代からいた!【NHK大河『光る君へ』#45】
新たな生き方を決意したまひろと出家した道長
まひろは賢子が家を支えてくれるようになったことを機に旅に出ることを決めます。家族や道長、彰子のため、そしてこの世での役目を果たすために懸命に走り続けてきたまひろ。自分の役目を終え、物語に描いた場所、さわ(野村麻純)や宣孝(佐々木蔵之介)が暮らした地を訪れてみたいと思い立ちます。旅先で海辺を走るまひろの姿はすべてから解放されたように自由で、軽やかなものでした。 旅に出る前、まひろは道長に「これ以上手に入らぬお方のそばにいる意味は 何なのでございましょう」「これで終わりでございます」と告げました。さらに、賢子が道長の娘であることも打ち明けます。 道長は賢子が我が娘であると知って納得したような表情を見せたものの、まひろが自分のそばから離れようとしていることが何よりもショックだった様子。それでも、まひろは道長の懇願も振り切り、自分の決断を変えることはありません。 その後、道長は出家することを決めます。出家の理由は頼通に政を譲るためなのか、それとも倫子(黒木華)が勘ぐっているようにまひろがいなくなったからなのか、その両方なのかははっきりしません。しかし、まひろがいなくなったことが出家の大きな理由であると考えるのは間違いではないでしょう。 道長がこの世で生き抜いてこられたのはまひろの存在があるからでした。また、道長はまひろと一緒になることを常に望んでおり、どこか遠くに行こうと誘ったこともありました。 「女は男と比べて独力で立つことがむずかしい」「女は感情的、男は理性的」という見方が長らくされてきました。しかし、まひろと道長の関係にもいえるように、男よりも女の方が実際のところ強く、たくましく、情に流されにくいのかもしれません。 そもそも、男と女はどちらが強いかどうかという議論はナンセンスであり、男女はお互いに寄りかかり合いながら、社会に同程度の影響を与えながら生きているといえるようにも思います。 ▶つづきの【後編】では、作品の背景を深掘り解説することで、ますますストーリーの理解とおもしさが深まる雑学とお届け。今回は平安時代における「出家」についです。
アメリカ文学研究/ライター 西田梨紗