仕事での「思わぬトラブル」はこうして乗り越える…トヨタ式「最悪の場面」で忘れてはいけない「2つのステップ」
仕事をしていると、一見、無理難題と思える事案をクリアしなくてはならないことや、これまで経験のないプロジェクトを任されて、従来の仕事のやり方だけでは、目的を達成できない事態に直面することもあるでしょう。 【マンガ】5200万円を相続した家族が青ざめた…税務署からの突然の“お知らせ” そんなときは、発想を大きく転換させ、抜本的にやり方をカイゼンしていく必要があります。 難題をクリアし、ブレイクスルーを起こすための、戦略的な視点の持ち方、新しい発想を生み出すポイントについて、前編記事の<仕事の人間関係、プロジェクトで「うまくいかない時」に他部署と取引先を味方につける、トヨタ式「スゴい方法」>に引き続き、森琢也著『トヨタで学んだハイブリッド仕事術』(青春出版社)より一部抜粋・編集してお伝えします。
とっさの事態に応じる「逆転シナリオ」の描き方
順調に進んでいた大型プロジェクトが予期せぬ大規模災害や感染症拡大で頓挫しそうになったり、取引先の社長交代に伴う発注方針変更や仕入先の原材料不足による生産停止に追い込まれたりと、思いもよらぬ困難やトラブルに巻き込まれることは多々あります。 規模の大小にかかわらず、プロジェクトを計画するときには、最初に「こうすればこうなる、そして、こうなるから成功につながる」と成功までの道のりを明確にしていくことが大切です。しかし、プロジェクトの成功確率をより高めるためには、困難やトラブルを織り込んだ、「逆転のシナリオ」の準備が大切です。 「最悪の場面」を複数想定し、「そうなってしまったときの挽回策=逆転のシナリオ」を用意することで、焦らず慌てず、適切な対応が可能になるからです。 ここでは、最悪の場面の想定と、逆転のシナリオの描き方について説明します。
STEP 1 :最悪の場面を想定する
重要性の高い仕事や規模の大きいプロジェクトほど、大規模な自然災害なども含めて突発的なリスクを複数、想定しておくことが肝心です。 トヨタグループでは、プロジェクトの計画で万全を期すことは大前提でしたが、同時に思いもよらない出来事が起こるかもしれないというリスクを常に想定していました。 何が起きても、いつも冷静沈着な上司にそのわけを聞いたところ、「想定外のことは起こるものだ」と“想定外そのもの”を想定内にしていたのが非常に印象的でした。 「想定外のことは起こるものだ」、と心の準備ができていれば、万が一のことが起きても慌てず動じず、むしろ「ピンチをチャンスに変えられないか」と考えられるくらいの「心の余裕を保つ」ことができます。 ■どのメーカーよりも対応が早いと評されるトヨタ 自動車を構成するさまざまな部品のサプライチェーン(供給連鎖)は複雑で、数万といれる企業が関係しています。そのため、大規模な自然災害などが発生したときに、複雑で多岐にわたる部品の仕入先のうち、どこか一つでも生産がストップしてしまうと、サプライチェーンの断絶が起きてしまい、自動車を製造できなくなってしまいます。 トヨタグループでは、常にそういったことを想定して準備しているため、万が一の自然災害が起きると「いまこそ自分たちの力を示すとき」と言わんばかりの勢いで、自社のみならず仕入先の支援に乗り出します。 何かアクシデントが起きたとき、トヨタグループが「どのメーカーよりも対応が早い」と評される背景には、常に何も起こらないことを祈りつつ、一方で起こったときのことを想定した万全の準備も行っているからなのです。