仕事での「思わぬトラブル」はこうして乗り越える…トヨタ式「最悪の場面」で忘れてはいけない「2つのステップ」
STEP 2 :逆転のシナリオを描く
最悪のシナリオを想定したら、それぞれのトラブルや困難に対して、それらが実際に起 きた場合にはどう解決するか、挽回するかを具体的にイメージしていきます。 ただ、実際に起こってはいないアクシデントやトラブルに対しての解決策なので、ただ漠然と考えただけでは具体的な解決策を想定することは難しいかもしれません。 そこで、次のような視点で考えてみてください。 【具体的な解決策(挽回策)をイメージするためのヒント】 ・解決に役に立ちそうな知識やスキルにはどのようなものがあるか ・どんな代替手段が考えられるか ・過去の経験や体験で参考になるものはないか ・誰かの支援を得られそうか(例えば他の工場からの応援を要請する、別ルートでの部品調達を行うなど) ・こんなとき、映画やテレビドラマだったら、どんな逆転劇が起きるだろうか このような視点で最悪のシナリオに対する解決策(挽回策)のイメージを膨らませて、具体的な準備を進めておくようにしましょう。
いざというときの「疑似体験」を積んでいる組織の強さ
いざというときに、慌てず動じずにシナリオの通りに行動できるようにするには、実際の大逆転や予期せぬアクシデントに見事に対応した事例を知っておいて、疑似体験を積んでおくことも有効です。 例えば、2011年の東日本大震災のときの東京ディズニーランドでのキャストたちの避難誘導は、事前の危機対応のシナリオが有効に機能し、7万人もの来園者がいながら負傷者がゼロだったことで賞賛されました。 運営するオリエンタルランド社では、阪神・淡路大震災後から「冬の午後6時、震度6強、来園者10万人」という過酷な設定で、年180回の防災訓練を重ねていたそうです。 被災時には何よりも来園者の安全を優先し、園内のショップで販売されているぬいぐるみを防災頭巾として提供すること、おみやげとして売られている菓子類等を非常食とすることなどが細かく決められ、キャストたちに周知徹底されていました。 その他にも、2014年7月の全国高校野球選手権石川県予選決勝で、9回裏0対8からの大逆転勝利を収めた星稜高校のエピソードがあります。 「最悪の場面」として9回時点で、大差で負けている状況を想定し、そこから大逆転までのシナリオをチーム全員で共有していたことで、選手たちはあきらめることも動揺することもなく、勝利を信じて戦い抜くことができたとされています。 このように起こり得る最悪の事態を想定して、疑似体験しておくことで、いざというときに落ち着いてシナリオに沿った行動が取れるようになるでしょう。
森 琢也(中小企業診断士)