「要領のいい人はずるい」という安易な思い込みが不幸のもとになる ヒトはいつ「歪み」を抱えるのか
「自分も頑張ってきたんだから君も頑張れるはずだ」
これは、拙書『どうしても頑張れない人たち』でも書かせていただきましたが、頑張ってもどうしてもできない子どもたち、人たち、そもそも頑張ろうとしても頑張れない子どもたち、人たちがいます。 ところが、頑張って成功してきた人たちは「やればできる、できないのは怠けているからだ」と、できない相手に圧力をかけてしまうことがしばしばあります。決して悪気がある訳ではなく、子どもたちに何とかテストでいい点数を取ってほしい、といった愛情の裏返しでそうしてしまうのです。しかし、これは結果的に無責任な声かけで終わってしまうこともあります。 概して学校の先生方は、やって出来た人たちです。出来ないままだと教師にはなれなかったでしょう。ある意味成功者ですので、やっても出来ない子に対する理解はなかなか進みません。自分基準でそういった子たちを頑張らせようとすると、逆に潰してしまうこともあるのです。 他にも“楽しみながら学ぼう”といって、学ぶことの楽しさを体験させてそこからやる気を引き出そうといった試みもされたりしますが、そもそも頑張れない子にとっては、学ぶことは苦痛なことだと念頭に置いておいた方がいいでしょう。成功体験が少なく頑張り方が分からないケースもあります。また逆に、頑張っていい点数を取れる子が、みんな勉強を楽しんでいるわけではないことにも注意しましょう。
「一つのことを成し遂げろ」「失敗を恐れるな」
これも成功者の言葉であると思います。我々自身、思い返してみましても、失敗を恐れず何かを成し遂げた経験など、ほとんどの方がないのではないでしょうか。これを真に受けると大変なことになりそうです。実際は、失敗を恐れながら、複数のことに保険をかけて、物事を少しずつ成し遂げていくことが大半だと思います。 もちろん失敗を恐れず一つのことを成し遂げられる成功者もいますが、ほんの一握りの成功者の陰には多くの失敗者がいるはずです。一方、我々には成功者の言葉しか届かないので、そのまま自分にも当てはめてしまうと、現実を見ず夢ばかり追いかけてしまって取り返しのつかないことにもなります。自分にはどうするのが一番適しているのかを見極めておくことが大切だと思います。