“フルリモート廃止”の潮流にネット上は賛否両論「東京の村社会の議論」リモートでのマネジメントに課題ある人は68%
LINEヤフーが2025年4月からの“フルリモート廃止”を発表した。コロナ禍を受けて、2020年には「オフライン世界最後の日」を宣言していたが、大幅な方針転換となる。出社日を設ける目的は「新しいプロダクトを生み出すためには、コミュニケーションの質を強化することが必要だと考えている」としているが、ネットでは賛否の声がでている。 【映像】リモートワークだとサボる?世代別アンケート この5年間でリモートワークも根付き、東京に一極集中するのではなく、地方に住みつつ働くライフスタイルも定着してきた。しかし、世界と比較して日本は、在宅勤務の生産性がオフィス勤務より下がるというデータもある。IT企業のフルリモートは難しいのか、『ABEMA Prime』では識者とともに議論した。
■国内最王手のIT企業が“フルリモート”断念?
LINEヤフーの“フルリモート”廃止までの経緯を振り返る。まずは2020年、旧ヤフーが「オフライン世界最後の日」と宣言。在宅ワークの回数制限を撤廃し、フルリモートが可能な体制にした。2022年には全国どこでも居住OKに拡大している。しかし、2025年4月からは、全社員(約1万1500人)が原則月1回以上の出社となり、社員の約6割に当たるカンパニー部門(事業部)は週1回以上の出社を求められる。 エンジニアで起業家、作家の安野貴博氏は、フルリモート化の成否は「作り方にもよる」と指摘する。「最初からフルリモートのスタートアップは回るが、物理的なオフィスとのハイブリッドでやろうとすると進まなくなる。企業カルチャーをどちらに振るかだ」。 実業家の沢渡あまね氏は、静岡県浜松市と愛知県設楽町で経営する立場から、「東京の村社会の議論だ」と断じ、「目先の効率で見れば、東京のオフィスに集まるのもわかる。しかし、中長期的に見たとき、年をとると通院や“ながら勤務”が当たり前になり、毎日出社は難しくなる」と語る。 それがリモートワークにより、「東京の村社会が囲い込んでいた人が解放され、多拠点居住や副業してくれる人が増えた」という。「中長期的に生産性を上げようとするときに、同じ職場や職域で多様性を得られるか。あらゆる地域に居住して、互いに本業だけでは得られない体験をすることで、イノベーション体質になっていく」。 こうした考えから、昨今の出社回帰の動きを「家を買って移住した人を『フルリモートを信じるのが悪い』と自己責任で論じるのは、目先のせこい話だ。未来を考えて、地方を見てほしい」と批判する。 IT企画推進支援を行うAnityAの中野仁代表は、「フルリモートのメリットは多いが、経営面では課題がある。会社がもうかり続けるならいいが、短期的と中長期的の両方を見たときに、どう考えるか。経営目線か従業員目線で、意味が変わる議論だ」と考察する。 リモートワークには、マネジメントの難しさもある。Job総研の調べ(2023年)によると、リモートワークのマネジメント課題の有無(マネジメント経験あり303人が対象)については、ある68.0%、ない32.0%となった。マネジメントの課題内容(マネジメントで課題あり206人が対象)は「メンバーの業務進捗の把握」48.1%、「メンバーの理解度・成長度がわかりにくい」39.8%、「忙しくて時間がとれない」12.1%だった。 沢渡氏は「“人的資本経営”が叫ばれる時代では、育成に投資すべきだ」と求める。「地方創生やグローバルで成果を出せる働き方ができる。世界全体が目先の生産性を重視して、急成長に毒されている。その結果、長く働けず、地域が置き去りにされ、メンタルヘルスの低下にもつながる。急成長するスタートアップは必要だが、じっくり成長する“ゼブラ企業”の考え方も大切だ」。