「日本中の空き家を転々としながらのびのびと暮らす」彼の快活人生、家賃や生活費はどうしているのか?
こちらの交流施設は1泊3000円で3泊目からは1000円。1カ月滞在しても3万円ちょっと。最近ではあちこちに作られるようになった交流施設だが、移住を目的とする施設が多く、目的が目的だけに諸塚村に限らず、長期滞在しやすい料金設定になっていることが大半だ。 だが、意外に使われていない例が多いのは関係人口にまで意識が行っていないため。移住してきそうな人にしか貸さないというケースが少なくないのだ。だが、嶋さんの例を見ていると関係人口にまで幅を広げれば、せっかくの施設が生きるのではないかと思う。
■夏に過ごすのは蓼科高原 もう1つの夏の拠点、蓼科高原は古くからの知り合いである農園主の親族の住宅。長らく賃貸していたそうだが、たまたま空いた。そこで農園主がその住宅に宿泊する農業体験ツアーを企画、嶋さんが管理人として呼ばれた。住宅に住み込み、ツアーに参加する人に朝食、夕食を提供し、農園や周辺の名所を案内するというのが仕事だ。 と聞くと大変そうだが、訪れる人の多くは嶋さんの友人たち。言ってみれば友人たちに涼しいリゾート地に遊びにおいでと声をかけ、一緒にご飯を食べ、農園や名所を案内し、時には外食に出かけ、温泉に入るというもの。知らない人相手ならいろいろ気遣いもあろうが、旧知の仲であれば夏の楽しいイベントといったところだろう。
こちらは管理人として依頼されているので、嶋さんが住居費を払うことはない。毎日誰かが来ているわけではないので、日によっては1人でのんびり過ごすこともある。ワーケーション目的で来る人もいるので、その場合は朝食、夕食だけを用意すればいい。 遊びと仕事、旅と日常の境目のない、いつも時間、仕事に追われて都会に暮らしている人からするとうらやましいというか、妬ましいような生活だが、今後、嶋さんのような各地に拠点を持つ暮らし方が増えていくのは間違いない。
2023年7月に閣議決定された第三次国土形成計画(全国計画)には地方への人の流れの創出・拡大や新たな暮らし方・働き方の先導モデルの形成などという言葉が散りばめられており、転職なき移住や二拠点居住などといった具体像が掲げられてもいる。 これに合わせて2024年5月には法改正(*)が行われており、二拠点居住促進のためにさまざまな制度が創設されている。今後5年間で二拠点居住推進のための計画を策定する自治体数累計600を目指すなどと目標も設定されており、現時点では本気らしい。