プレミアEASTを制した旧友たちの活躍も大きな刺激に。「帰ってきた背番号1」東海大相模GK松坂亮、躍動中!
[1.2 選手権3回戦 東北学院高 0-3 東海大相模高 U等々力] スタメンを外れた時期も、自分自身を信じて、自分自身を見つめ直して、とにかく日々のトレーニングを懸命にこなしてきた。腐らず、強気に、前向きに。その先で掴み直した正守護神の椅子に座るからには、もうピッチの上で全力を尽くすだけだ。 【写真】武藤嘉紀が初めての…ファン歓喜「息子くんそっくり」「親子でイケメン」「めっちゃ可愛い」 「試合に出ていない期間はどうしても気持ちが腐りがちになってしまうので、そこで腐らず、自分がどうチームに貢献できるかということを考えて、チャンスがあったらそれをモノにして、自分が出ることを考えながらやっていたので、スタメンを取り戻せて、選手権にも出られて良かったなと思います」。 全国8強へと勝ち進んだ東海大相模高(神奈川)の『帰ってきた背番号1』。GK松坂亮(3年=横浜FCジュニアユース出身)は試合に出られることの意味を噛み締めつつ、憧れの大舞台を誰よりも楽しんでいる。 「ずっと守備の時間が続いていて、ディフェンダーにしてみても結構厳しいゲームだったと思うんですけど、前線の選手がしっかり決めてくれて、結果的には3-0というスコアになったので、良いゲームだったかなと思います」。 終わったばかりの試合を、松坂はそう振り返る。Uvanceとどろきスタジアムby Fujitsuで行われた、準々決勝進出の懸かる3回戦。東北学院高(宮城)と激突した一戦は、開始5分で東海大相模が先制したものの、以降はなかなかゲームリズムを引き寄せ切れない。 「相手のリズムになっていた中で、これだけの応援があったので、なかなか遠くまで声が届かなくて大変でした」。地元・神奈川のチームを応援するために詰め掛けた大観衆の中で、声を張り上げても味方に指示は伝わらない。割り切って、今まで積み重ねてきた連携をベースに、1つ1つ相手の攻撃を凌いでいく。 前半にはヒヤッとする場面もあった。右サイドからフィードを送り込まれると、味方との呼吸が合わずに、飛び出した松坂はボールに触ることができず、入れ代わった相手のフォワードにあわやというヘディングを放たれてしまう。「ボールの高さ的には自分が出たほうがいいと思って出たんですけど、ちょっとギリギリだなと思って出たらカブってしまいました……」。何とか失点を免れたが、改めて気持ちを引き締め直す。 後半7分。再び右サイドから放り込まれたアーリークロス。同じ轍を踏むわけにはいかない。視界には飛び込んでくる選手を捉えていたものの、正確に落下地点に入ると、相手と交錯しながらもパンチングで危機回避。ゴールにしっかりと鍵を掛け続ける。 終わってみれば、スコアは3-0の快勝。「守備から作ったリズムで後半は良い流れになってきて、センターバックの塩田や石井を中心に守り切ることができました」。試合後は堅陣を築いたDF塩田航央(2年)とDF石井龍翔(2年)の2年生センターバックコンビと、笑顔で完封勝利を喜んだ。 今シーズンのチームはインターハイでも全国16強を経験しているが、松坂に出場機会は訪れなかった。「インターハイ前までは自分が出ていたんですけど、リーグ戦で自分のミスで失点してしまって、そこから代えられることになりました」。自分も立つはずだった全国のピッチで躍動するチームメイトの姿が、ただただ眩しかった。 「そのころは『安定感がなかったな』と自分でも思っていたので、安定感を出しつつ、自分の武器も出すことを意識して、練習していました」。得意なキックの精度も磨きつつ、ディフェンスラインの背後もカバーできる守備範囲の広さにも目を向け、必死にアピールを続けていく。 ポジションを奪い返して臨んだ選手権県予選。優勝候補の日大藤沢高と対峙した準決勝はPK戦にもつれ込むと、松坂は相手のキックを2本ストップして、勝利に貢献。チームも勢いそのままに初の全国切符を手繰り寄せる。 「インターハイはベンチから見ていて、『自分が出ていたらな』とずっと思っていたので、自分のプレーが安定してきたことでやっとスタメンに戻ることができて、嬉しい気持ちでいっぱいでした」。試合に出られることは決して当たり前ではない。ベンチに座るチームメイトの想いも背負って、晴れ舞台のゴールマウスに立ち続けている。 中学時代は横浜FCジュニアユースに所属。2024年シーズンのプレミアリーグEASTを制した横浜FCユースには、かつてのチームメイトたちが多数在籍しており、彼らが成し遂げた結果も小さくない刺激になっているという。 「自分は中3の夏まで身長が170センチぐらいで、ユースに上がるか上がれないかの面談でも、身長のことを言われて上がることができなかったので、『自分がユースに上がっていたらどうなっていたんだろう』ということを考えたこともあるんですけど、それを糧にこの選手権も頑張ろうと思っていたので、かなり刺激になりました」。 今では身長も181センチまで伸び、ハイボールの処理も1つの武器になっている。以前とは違う自分を見せるうえで、注目度の高いこの選手権は格好のステージ。次の関門を潜り抜ければ、その先に待っているのは国立競技場。勝ち進めば勝ち進むほど、成長の証をより多くの人たちに披露することができる。 「選手権はこれだけの応援の人が見に来てくれるので、自分の良いところも見てもらえるなと思っています。自分はいろいろな人に見られても緊張しないタイプですし、もう選手権の雰囲気にも慣れたので、『次も楽しもう』という気持ちが大きいです」。 チームが紡ぐさらなる歴史の1ページは、『帰ってきた背番号1』が力強く書き記す。チームを代表して試合に出ることの意味を誰よりもよく知る、東海大相模の正守護神。待ちに待った選手権の舞台で松坂亮、躍動中。 (取材・文 土屋雅史)
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