J2開幕戦。問題解消のFC町田が悲願J1昇格への第一歩刻む
深まる手応えに言葉を弾ませるのはチーム最古参の34歳、DF深津康太だ。ゼルビアがJFLを戦った2009シーズンからの2年間は、チームのメインスポンサーの社員を務めながら生計を立てた苦労人は、クラブが置かれた状況がポジティブに変化するなかで気持ちを新たにする。 「ハングリー精神をもってきたからこそ、みんなゼルビアで一生懸命にサッカーをやってきた。だからこそ調子に乗ってしまうことが怖いし、その意味でも自信をもちながらも謙虚に、相手をリスペクトしながらゼルビアの未来へ向けてチャレンジしていきたい」 サイバーエージェントの子会社、インターネットテレビ局『AbemaTV』がJリーグの放映権をもつDAZNとパートナーシップ契約を結んだのは今月19日。ヴェルディとの開幕戦から、今シーズンのゼルビアのホームゲーム全21試合の生中継を行うことになった。 「テレビだと本当に大きな試合しか中継しない。できる限り新しい視聴者層へゼルビアを広めていくうえで、テレビとDAZNの間を補完できる役割を担えれば、と考えています」 資金面でのバックアップだけでなく、ゼルビアの認知度も高めていく施策を講じる藤田社長は、キックオフ前も勝利の余韻が残る試合後も相馬監督や選手たちと顔を合わせていない。経営に参画する前の体制を尊重し、余計なプレッシャーをかけたくない、という配慮がそこにはあった。 この日は最寄りとなる小田急線鶴川駅から約1時間、1万歩をかけて徒歩でスタジアム入りした。 開幕戦の勝利を見届けた後に「験担ぎ的にも、これからも歩いて来ようかな」と笑った藤田社長は、視界が良好になりつつある未来へ、目を細めながらこんな言葉を紡いでいる。 「監督が浮かれることを許さない感じなので。しっかりと引き締めながら、静かにチーム全体のモチベーションが上がっている感じですね」 劇的に変わっていくハード面およびソフト面と、黎明期から変わることなく受け継がれてきた崇高な魂。両輪を鮮やかにシンクロさせ、会心のスタートを切ったゼルビアは自信をさらに膨らませながら、J1昇格の最有力候補、柏レイソルのホームへ乗り込む3月2日の次節への準備を進めていく。 (文責・藤江直人/スポーツライター)