J2開幕戦。問題解消のFC町田が悲願J1昇格への第一歩刻む
白熱の攻防が続いた一戦は後半18分、横浜F・マリノスから完全移籍で加入した新戦力、リオ五輪代表候補のFW富樫敬真(25)が決めた値千金の先制弾を死守したゼルビアに軍配が上がった。観戦に訪れていた藤田社長は、時間の経過とともにゾクゾクするような思いに駆られていたと笑う。 「ゼルビアの球際の頑張りは本当にすごい。相手チームからは『面倒くさいチーム』と言われていると聞きましたけど、確かにこれだけ球際でしつこく来られると、相手としては嫌でしょうね」 全体の陣形をコンパクトに保ちながら、前線から激しくプレッシングをかけ続ける。豊富な運動量と球際の激しい攻防を厭わない闘争心を融合させたスタイルを、指揮を執って通算7シーズン目になる相馬直樹監督(47)は「正直、ものすごくリスクのあるサッカー」と表現する。 自陣に広がるスペースを相手に突かれる危険性と表裏一体であり、体力的に厳しくなる後半や夏場には失点する確率も高まる。それでも虎穴に入らずんば虎子を得ず、とリスクを覚悟で泥臭く戦う集団を作り上げてきただけに、「面倒くさい」という言葉がもつ響きが相馬監督を喜ばせる。 「シーズンが終わった後に、対戦相手から『本当に嫌なチームだった』と言われるように。我々は高い壁を乗り越えなければいけないが、それができるだけの準備をここまでやってきたので」 日本代表が悲願のワールドカップ初出場を果たした、1998年のフランス大会で左ウイングバックのレギュラーを務めた指揮官のもとで、いわゆる「ゼルビアイズム」が産声をあげ、トップチーム創設30周年を迎えた今シーズン、はっきりとピッチ上へ反映されてきた。 「一人でもさぼれば、僕たちは崩壊してしまう。全員が仲間のために走り、仲間のために体を張って守り、仲間のために点を取る。それができなければ、どんなに上手い選手でも試合には出られない。みんなが同じ方向を向いているのは、やはり相馬さんの影響が大きいですよね」