会社トップの交代は株価に影響するか セブン&アイとクックパッドのケース
事前に予測できた?
16年3月24日の開示の後、クックパッドの株価が下落したことは、とてもわかりやすい展開です。しかし、こうした展開は事前に予測できるものでした。 まず同社は同年1月19日「株主提案権の行使に係る書面の受領に関するお知らせ」を開示しています。同社の創業者である佐野氏を含む4名の株主から、同年3月開催予定の定時株主総会における株主提案権に係る書面を受領したという内容なのですが、その提案の内容は、佐野氏を含む8名(穐田氏は含まない)を取締役候補とするというものでした。同社の経営方針をめぐり、穐田氏と佐野氏の間で対立が生じていたのです。 この開示の後、同社の株価は急落します。開示が行われた19日の同社株式の終値が2183円だったのに対し、翌20日は1683円まで値を下げて取引を終えました。その提案が実現すれば、穐田氏は代表執行役を退任することになり、また、佐野氏は同社の議決権を43.581%持っているため、それが実現する可能性も高かったからだと思われます。 その後も同社の株価は低迷し、2月5日には1372円まで値を下げたのですが、翌営業日の8日には1740円まで回復しました。2月5日、佐野氏との間で取締役選任議案の一本化に関して基本的な合意に至ったとする「取締役選任議案に関する基本的合意について」を開示したからです。これで混乱が収束したと捉えられたのでしょう。 そして同社の株価は3月24日まで回復し続けることとなるのですが、25日以降再び下落することは、実は同社が、2月12日「当社第12回定時株主総会における取締役選任議案の決定及び株主提案の取り下げに対する同意に関するお知らせ」を開示した時点で予測できただろうと思われます。同社側と佐野氏ら側の双方の意向を調整した取締役候補が決められたものの、その取締役候補9名のうち6名は、佐野氏らによる株主提案で取締役候補とされていた人だったからです。 取締役候補には穐田氏も含まれていたものの、佐野氏らによる株主提案で取締役候補とされていた人のうちの誰かが新しい代表執行役になることは、2月12日の開示が行われた時点で明らかだったのです(新たに代表執行役となった岩田氏は、佐野氏らによる株主提案で取締役候補とされていた方)。本来であれば、同社の株価は、2月12日の開示の後、再び下落に転じるはずだったのです。 (事業創造大学院大学准教授 鈴木広樹)