「腰痛の85%は原因不明」 病院で治らない腰痛を自分で治すための「三つのエクササイズ」
人生にはいくつもの壁が立ちはだかる。とりわけ人生100年時代、健康長寿を全うするにはさまざまな心身のケアが欠かせず、まずは何よりも「動ける体」を保つことが重要だ。ゆえに腰痛はわれわれの最大の敵ともいえる。それなのに、腰痛を軽視していませんか? 【金岡恒治/早稲田大学スポーツ科学学術院教授】 【写真を見る】スマホを使用する際の姿勢にも要注意だ ***
私はこれまで1000例を超える脊椎手術を担当し、その何十倍もの腰痛患者さんを診てきました。そのような脊椎外科医の立場から言うのも妙ですが、最近、ふとこう思うことがあります。 腰の痛みは果たして本当に「病気」と言えるのだろうか、と――。 〈こう問いかけるのは、早稲田大学スポーツ科学学術院の金岡恒治(こうじ)教授だ。2012年のロンドン五輪でJOC(日本オリンピック委員会)本部ドクターを務めた名スポーツドクターとして知られる。 以下は一流アスリートを含め、数多くの患者を診てきた腰痛治療のスペシャリスト・金岡氏による、具体的な対策を含めた「新・腰痛論」である。〉
「見える腰痛」は15%
椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、腰椎すべり症などの明らかな神経の圧迫が原因で発生する痛みや神経まひは、確かに専門家の治療を必要とする「病気」といえるでしょう。 一方で、腰痛持ちのみなさんの中で、こんな経験がある人はいませんか。腰が痛むので整形外科に行きMRI(磁気共鳴画像)等の画像検査を受けてみたものの、これといった異常は見つからない。「どこにも悪いところはありませんね……」などと言われ、痛み止めをもらって数日で痛みは軽減し治療は終了。でも結局あの痛みは何だったのか、そもそも治ったのかは曖昧なまま……。 こうした医療対応は、ある意味では仕方のない面があるのかもしれません。厚生労働省の調査では、腰痛持ちの人の数は推定で約2800万人にも達します。そのうち画像検査で明らかに椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症と分かり、場合によっては手術が必要な重症の「見える腰痛(特異的腰痛)」は15%に過ぎません。その他の85%は、画像検査ではその痛みの元が判然としない軽症の「見えない腰痛(非特異的腰痛)」です。原因がはっきりしなければ、これといった治療の施しようがないというのも一面の真実ではあるでしょう。だから、患者さんには不満や割り切れなさが残る。